エムバペがパリ・サンジェルマンで怪物に進化したポイントを風間八宏が発見。「足裏が見えない走り」とは?

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

ストライカーとしての能力も完璧

 そしてもうひとつ、エムバペ自慢のテクニックが シュートだ。トップデビュー以来、モナコとパリ・サンジェルマンで重ねたゴールは、もうすぐ200得点。フランス代表でも、すでに27得点をマークするなど、ストライカーとしての才能も非凡だ。

「エムバペの場合も、ドリブルとシュートのステップがほとんど変わらないので、相手GKにとっては、いつシュートしてくるのかがわかりにくいという特徴があります。しかも、シュート精度も高いうえ、しっかりゴールの隅に決めることもできる。どこを狙えばいいのか、どこに蹴ればGKが届かないのか、そういった一瞬の見極めもできるので、ストライカーとしての能力も、パーフェクトだと言えます。

 たとえば、昨季のチャンピオンズリーグのレアル・マドリード戦(ラウンド16第2戦)で決めたゴールなどは、エムバペが持つ高いシュートテクニックが集約されています(※編集部注:ドリブルでペナルティーエリア内に持ち込み、相手DFと1対1になった状態からゴール左隅を突いたシュートシーン)。

 あのシュートの直前、 スロー映像で見ないとわからないようなコンマ単位の秒数のなかで、GKティボー・クルトワとハイレベルな駆け引きをしていて、シュートを撃つ直前にステップを踏み変えています。その高度なフェイントを入れたことによって、クルトワの的を絞らせず、狙いどおりのゴールを決めました。

 つまり、相手GKがわからないタイミングで、届かない場所にシュートを決められる。自分から仕掛けて、クルトワという世界トップレベルの選手を翻弄したわけです」

 サッカーの王様と呼ばれるブラジルのペレ氏以来、10代にしてW杯決勝の舞台でゴールを記録した神童は、あれから4年の年月を経て、とてつもない怪物になってカタールW杯で連覇を目指す。

 エムバペはどこまで進化するのか。一瞬たりとも目が離せない。

キリアン・エムバペ
Kylian Mbappe/1998年12月20日生まれ。フランス・パリ郊外のボンディ出身。フランスの育成機関の名門・クレールフォンテーヌで育ち、2015年にモナコでトップチームデビュー。翌2016-17シーズンはチャンピオンズリーグで大活躍し、チームの準決勝進出に貢献すると、2017-18シーズンからはパリ・サンジェルマンに活躍の場を移し、今季6シーズン目を迎える。各年代のフランス代表でもプレーし、A代表は2017年にデビュー、翌年ロシアW杯では圧倒的なスピードを武器にセンセーショナルな活躍を見せ、フランスの優勝に貢献した。

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風間八宏
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

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