エムバペがパリ・サンジェルマンで怪物に進化したポイントを風間八宏が発見。「足裏が見えない走り」とは? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

走っている時に足裏が見えない

 すべての能力を兼備するエムバペだが、そのなかでも最大の武器となっているのが、異次元のスピードだ。その傑出した速さについて、風間氏はある動きに着目。その特徴を解説してくれた。

「ドリブルしている時の、足の動かし方に注目してください。あれだけ速く走っているのに、ほとんど足が浮いていません。別の言い方をすれば、走っている時に足裏が見えない。短距離走の選手の走り方と違って、摺り足というか、まるで水面を歩くようなイメージで、次々と左右の足を前に出してボールにタッチしています。

 これはメッシやアーリング・ブラウト・ハーランドらにも共通している点ですが、要は、足の動きに無駄がないから速いわけです。

 よく、ただ走るだけだとそれほど速くないのに、ドリブルをすると速くなる選手がいます。それはなぜかと言えば、ボールがない時は後ろ足で地面を蹴って、足を上げながら走る一方、ドリブルをする時は体の前にあるボールをタッチするために、足を速く前に出そうという意識で走ります。それよって、左右の足が前に速く出てくるから、自然と走るスピードも速くなるという理論 です。

 もちろん、エムバペの場合は普通に走るのも抜群に速いわけですが、それでも無駄に足を上げていません。地面を蹴っている時間が無駄になるからです。走っている時のエムバペの足裏が見えない理由は、そこにあります。

 実は、この足の運び方を覚えると、あまり足が速くない選手も速くなれます。とくにサッカーのドリブルは足元にボールがあるので、ボールに触れる必要がある。そうすると、足を速く前に出すためには、足を上げている時間が無駄になりますからね」

 異次元の高速ドリブルのなかには、足の運びを含めた走り方の技術も隠されていた。もちろん、生まれながらの才能もあるだろうが、その能力を最大限に発揮するためには、理論に基づいたしっかりとした技術が必要であることを、風間氏は改めて強調する。

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