上田綺世がベルギーで飛躍するために必要なこと。分岐点となる「シーズン二桁得点」の壁 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

大台突破は鎌田大地と鈴木優磨

 ただ、上田は海外のディフェンダーを苦にしないところがある。東京五輪、あるいはそのテストマッチでも、激しく体を当てられてもボールコントロールの精度が落ちなかった。そもそもポジション取りがうまく、準備動作で相手に差をつけられる。欧州の選手のほうがクロスボールの質はおしなべて高いだけに、背後を取ったファーでのゴールは増えるかもしれない。

 日本にいる時以上に、ストライカーは単純に数字がモノを言うポジションだ。どれだけポストプレーが華麗で、中盤の選手のようにボール扱いがうまく、きれいなパスも出せ、サイドへ流れて幅を作れても、ゴールが獲れないFWは「怖さ」がなく、相手にあしらわられる。チームにとっての武器にならないのだ。

 そこで、まずはリーグ戦での二桁得点が目標になる。

 過去、日本人FWが数多くベルギーに挑戦しているが、二桁の壁を越えられた選手は意外に少ない。鈴木隆行、小野裕二、永井謙佑などは1点を獲るのに四苦八苦していた。複数シーズン在籍した久保裕也は最多で7得点、同じく豊川雄太も最高7得点だった。

 ちなみに昨シーズンでは鈴木武蔵(ガンバ大阪)がKベールスホットVAで6得点、林大地(シント・トロイデン)が7得点、原大智(シント・トロイデン)は8得点だった。悪くはないが、一桁では「飛躍」に直結しないのだ。

 二桁に乗せることができたのは、2018-19シーズンにシント・トロイデンで12得点の鎌田大地(フランクフルト)と、2020-21シーズンにシント・トロイデンで17得点を記録した鈴木優磨(鹿島アントラーズ)のみである。鎌田は純粋なストライカーではないが、ベルギーでの活躍がジャンプアップのきっかけになった。また、鈴木はセリエAへの移籍などが噂されるも、交渉がまとまらなかった。その後に帰国を余儀なくされたのは不運としか言えない。

 上田がチームメイトとコミュニケーションをとって連係を作ることができたら、二桁はおろか20得点越えも見えてくるだろう。

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