「なぜブラジルが世界の頂点に立つことができたのか」。あの日から20年、チームスタッフが見た2002年W杯優勝までの道のり (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

フランスの敗退で空気が一変した

 ブラジル優勝のもうひとつの理由は、フランスがグループリーグで早々に消えたことにある。

 それより4年前の1998年フランス大会、ブラジルは決勝でフランスに敗れた。この時のブラジルは非常にいいチームで、正直、2002年よりも実力は上だったと思う。にもかかわらず敗れたことは、ずっと彼らのトラウマとなっていた。「ブラジルではサッカーが宗教」という言葉は皆さんも聞いたことがあると思うが、優勝以外は失敗だ。ショックは大きかった。

 2002年のフランスは、ジネディーヌ・ジダンこそケガでほとんど出られなかったが、ユーリ・ジョルカエフ、マルセル・デサイー、リリアン・テュラム、ダビド・トレゼゲ、ティエリー・アンリといい選手が揃っていて、フランスはブラジルの鬼門と思われた。もしフランスが勝ち進めば、準々決勝でブラジルと当たる可能性が高かった。

 ところがそのフランスは、1勝もできないまま、グループリーグ最下位で敗退してしまった。この時からブラジルのチームの雰囲気が、ガラッと変わったのを、私は今でも覚えている。

 6月11日、フランスは仁川でデンマークと戦い、0-2で敗れ、W杯から姿を消した。ブラジル代表はテレビでその試合を見ていた。試合後の夕食は、みなほとんど無言だった。しかし、どこかエネルギーが高まっているのを感じた。のちにロナウドがこの日のことをこう語っている。

「何か奇跡のような、目に見えない力が我々に与えられるのを感じたんだ。夜もあまり眠れず、同室のロベルト・カルロスと、今日からすべてが変わると話をした」

 ブラジルはそれまでトルコと中国と戦っており、勝利はしたものの、はっきり言ってそれほどいい出来とは言えなかった。しかし、それから2日後のコスタリカ戦で、ブラジルは目覚めた。それまでの敵よりもずっと手強い相手だったが、ブラジルはまるで音楽に乗るかのように軽やかにプレーし、5-2で勝利した。実はその前日には、もうひとつの優勝候補、アルゼンチンも敗退していた。優勝できるかどうかはすべて自分たち次第で、他人に左右されることはない。チーム内にはそんな空気が漂っていた。

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