マイケル・オーウェン、クリスティアン・ヴィエリ、そして審判界のヒーローとヒールはいま (3ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

現在もサッカー界を支えるコッリーナ氏

ピエルルイジ・コッリーナ(イタリア)

 最後にふたりの審判の現在を紹介しよう。彼らもまた2002年大会の主役だった。

2002年W杯決勝の笛を吹いたピエルルイジ・コッリーナ主審(イタリア)2002年W杯決勝の笛を吹いたピエルルイジ・コッリーナ主審(イタリア)この記事に関連する写真を見る ひとり目はコッリーナ。日本対トルコ戦、そして最も重要な決勝のブラジル対ドイツの笛を任されたイタリア人審判だ。スキンヘッドに大きな目玉で毅然とジャッジする姿を覚えている人は多いだろう。大会後は日本でも人気になり、たこ焼きのCMに起用されたり、『キャプテン翼』に登場したりした。

 多くの選手からも評価されており、ブラジルのドゥンガは彼の正確なジャッジを「審判界のメイド・イン・ジャパン」と呼び、イタリアのGKジャンルイジ・ブッフォンは「彼がピッチに立っていると姿はエレガントで、まるでジャケットにネクタイをつけているように見えた」などと言っている。

 1998年から6年連続でIFFHS(国際サッカー歴史統計連盟)の最優秀審判に選ばれ、また2010年には、歴代を通じての最優秀審判にも選ばれた。イタリアでは唯一審判としてサッカーの殿堂入りも果たしている。

 彼が本当に特別な審判だったことは、FIFAやイタリアサッカー協会などの対応からもわかる。彼は2004年のユーロで国際審判の定年を迎えたのだが、その後、特別にW杯予選のポルトガル対スロバキアの試合の笛を吹いている。彼の引退試合としてくれたのだ。またイタリアサッカー協会はコッリーナの力量を惜しみ、それまで45歳だった審判の定年を46歳にまで伸ばした。

 コッリーナは引退後もサッカー界に残り、AIAイタリア審判協会の会長、UEFA審判委員を経て、2017年からFIFA審判委員会委員長を務めている。VARを始めとした審判技術の進歩に力を入れている。

 人気者の彼は、今でも街を歩くと、サインやセルフィ―を求められるという。彼が2002年のW杯決勝で着ていた黄色の審判ユニフォームは、イタリアのサッカー博物館に展示されている。

バイロン・モレノ(エクアドル)

 コッリーナが2002W杯の審判界のヒーローなら、ヒール役はエクアドルのモレノだろう。

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