セルティックの半年間で旗手怜央が感じた日本との違い。「ありとあらゆる部分が速い」「足首の周りに傷が増えた」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

できているところに目を向ける

 前編でも綴ったように、プロになってからまとまったオフもなく、走り続けてきた自分は、疲労の蓄積により、自分でも認めざるを得ないくらい、運動量が落ちていた。そのため、コーチとミーティングした時には、試合に出たい気持ちはありつつも、本音をぶつけた。

「自分はこのまま試合に出ていていいのか」「正直、今の自分は監督が求めているようなプレーはできていないと思っています」

 その時、コーチはこう返してくれた。

「それ以上に、できていることがたくさんある。個人としてはできていないと思っているところがあるのかもしれないけど、チームのためにできている部分、やってくれていることがたくさんある」

 足りないところに目を向けるのではなく、できているところに目を向けさせてくれたのだ。

 そして、コーチは最後に、こうも言ってくれた。

「何より、監督が起用しているということはできているってことだ」

 本音を吐露した時には、メンバーから外される覚悟もしていた。でも、次の試合のメンバーが発表された時、自分の名前を見ると、スタメンに並んでいた。

 アンジェさんから直接、言われたわけではなかったけど、コーチの言葉を聞き、「監督のためにも」という思いは込み上げてきた。

 同時にジュビロ磐田でプレーする遠藤保仁さんの言葉も心に響いていた。面識があるわけでも、直接教えてもらったわけでもないけど、コンディションを維持する秘訣を聞かれた遠藤さんは「高望みしない」と答えていた。

 今の自分にできることがすべてだと思っている。コンディションがいい時の自分を100%と考えるから、70、80%の時には、もう20、30%の力が出せると思ってしまう。でも、今の自分が100%であれば、その限りでやっていくしかない。

 コーチと監督の言葉、そのマインドは、シーズン終盤まで戦いきる自分の支えになった。

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