母国を追われたハカン・シュクル、うつ病を告白のドノバン...2002年の人気者たちはいま (4ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by AFLO

いつのまにかサッカーが義務に...

 同時に、テレビのバラエティ番組の常連ともなる。芸能人の冷蔵庫をそのままスタジオに持ってきてシェフが料理を作る番組の司会を務めたり、BTSメンバーと出かける旅番組に出演したりと大活躍。彼がいろいろなチームを率いてKリーグのチームに挑戦するというリアリティショーは定番の人気番組になっている。

 もちろんバラエティだけではなく「MBC」のサッカー中継の解説員として、ワールドカップなどの試合解説も務めている。最近は少しぽっちゃりしてきて、おやじギャグを飛ばすキャラとして人気を博している。

ランドン・ドノバン(アメリカ)

 2002年の大会で、ベスト8進出という史上最高の成績をあげたチームがアメリカ。その原動力となったのがドノバンだ。当時20歳だったドノバンは5試合で2得点をマークし、大会のベストヤングプレーヤーに選ばれた。2014年に代表を引退するまでに、3度のW杯を戦い、彼が繰り出した57ゴール、31アシストは、ともにアメリカ代表の記録で、まだ誰も塗り替えることはできていない。まさにアメリカサッカー界の顔である。

 クラブチームではドイツのレバークーゼン、イングランドのエバートン、そしてLAギャラクシーで長くプレーしたが、実は4度現役を引退している。

 最初は2014年、32歳でLAギャラクシーを引退。しかし2016年にまだ同チームに復帰し、6試合だけプレーしてまた引退した。2018年に1月にはメキシコのクラブ・レオンと契約をし、同年の7月に3度目の引退。最後は2019年インドアサッカーのサンディエゴ・ソッカーズに入り、4度目の引退を果たした。

 選手生活に別れを告げると、2019年、彼はUSLチャンピオンシップ(アメリカ、カナダのチームからなる2部リーグ)のサンディエゴ・ロイヤルを共同で設立。その後、チームの初代監督に就任した。ただドノバンはそれまで監督経験がなかったため、元アメリカ女子代表選手や有能なコーチからなるアドバイザーグループを作り、サポートしてもらっている。今は北米のクラブチーム間の関係をより密接にすることを目指しているという。

 最近、ドノバンはキャリアを通じてうつ病を患っていたことを公表。いつのまにかサッカーは義務となってしまい、それに縛られていることに苦しんだという。

「ケガをしたらそれが治るまで治療やリハビリが行なわれるのに、精神が病んでもそれは許されない」と語るドノバンは、プロスポーツ界に蔓延する、選手に精神的なタフさを要求する空気に疑問を呈している。
(つづく)

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