レアルCL制覇の要因とは? ヴィニシウスの成長とクルトワの美技を誘発した戦いぶり (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

ストレスを溜めていったリバプール

 前半15分、17分、20分と、リバプールはたて続けにチャンスを掴んだ。絶対に負けられないプレッシャーから解放されるはずの決定的チャンスを決め損ねた。サラーが放った2本のシュートと、サディオ・マネが放ったシュートは、決まっていても不思議はないナイスシュートだったが、GKティボー・クルトワにことごとく阻止された。その回数に比例して、リバプールはストレスを溜めることになった。

 逆に前半43分、カウンターからカリム・ベンゼマにゴールを許す。オフサイドか否か、ただちにVARが介入し、3分以上を費やす長考の末、ノーゴールとなった。だが、リバプール側は思いどおりにいかない展開に、ますますストレスを溜めることになった。

 一方、レアル・マドリードには、オフサイド判定にも落胆する様子はなかった。うまく攻めれば、決定的なシーンを作り出せるという確信を抱いた様子だった。実際、ヴィニシウス・ジュニオールとベンゼマの2人は、リバプール側の脅威になっていた。番狂わせを重ねてきた過去3戦同様、2人のコンビネーションプレーだけで局面を打開することができていた。

 前半を終了した段階で予想するならば、まったくの互角。好勝負となっていた。くり返すが、この時点で下馬評と様子はだいぶ変わっていた。流れはレアル・マドリード側に傾いていた。過去3戦と同種の匂いにスタンドは包まれようとしていた。

 後半14分、ルカ・モドリッチ、ダニエル・カルバハル、カゼミーロで中盤の右サイドでボールをつなぎ、タッチラインで開いて構えるフェデリコ・バルベルデにボールが渡った。対応に出たのはCBのフィルジル・ファン・ダイクで、本来のマーカーである左SBのアンドリュー・ロバートソンは、モドリッチを深追いしすぎて、帰陣できずにいた。モドリッチのうまさを褒めるべきか、実直すぎたロバートソンのミスと言うべきか。

 バルベルデはリバプール最終ラインの乱れた並びを確認すると、そこに鋭いシュート気味のボールを蹴り込んだ。決勝点が生まれた瞬間だった。逆サイドから走り込んだヴィニシウスがこれに合わせ、ネットを揺るがした。

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