田中碧「苦しい」ながらも「楽しめた」デュッセルドルフでのシーズン。自由にプレーする感覚をドイツ2部で知った

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

田中碧のなかで変わったこと

 デュッセルドルフに加入して、自身のプレーにはどのような変化があったのだろうか。2部の10位でフィニッシュしたチームだ。攻撃に特色があるというよりも、やはり守備が大事になってくる。

「チームとしてすごく守備に重きを置いているので、自分のプレーの比重もすごく守備に置かなきゃいけないなと思うし、それはやっぱり日本にいる時とは違うことであって。自分のリアクションだったり、プレーしている時の神経の使い方は、より守備に置いている感じがあります」

 田中は中盤でプレーしているが、一時期は運動量の多さゆえ、攻守両面で穴を開けているように見える時期があった。攻撃に関しても、パスをもらえれば仕事ができるという仕草を見せるが、ポジショニング、走り込む場所が違うのか、なかなかパスは来ない。パスが来ないから、結果も出せない。

 ただ中盤を献身的に走っているように見える時期もあった。だが、それも時間とともに解消されたようだ。

「このリーグでやる時、自分がどうやって90分間、ゲームに関わるのかはすごく考えていて。僕は前の選手じゃないので、ボールを持って何かをするわけじゃなくて、ということがすごく今はクリアになっているというか。自分のやることがはっきりしています。

 攻撃参加の回数は少なくても、いく時といかない時をはっきり分けている。だからこそチャンスに入っていく回数はすごく増えているし、もちろん決めきれない時もありますけど、それは自分のなかで変わったことかなと」

 守備に重点を置きながらも効果的に攻撃参加----その感覚を掴めてきたということなのだろう。

 そのうえで、こうも言う。

「Jリーグと違って、ブンデス2部は縦に速い。日本にいる時よりも(守備重視なので)ボールに関わる回数は減ったので、より自由にプレーしている感覚があるんですよね。

 もちろんチームとして細かいポジショニングなどは決まっていますけど、ボールをすごくつないでサッカーをするチームが少ないなか、そんなに立ち位置(ポジショニング)を意識しすぎず、自分の感情のままって言ったらへんですけど、それを大事にしながら動いてはいます。

 徹底的につなぐサッカーをどのチームもしてくるわけじゃないので、そこに備えるじゃないですけど、あえてボールに関わらない時間を増やしながらいかにチャンスに関わるか、というのはすごく意識していますね」

 サッカーがシンプルになれば、逆に自由度が増すということなのだろうか。

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