マンチェスター・ユナイテッドの失われた9年。「ポスト・ファーガソン」迷走の責任は誰にある? (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

優勝請負人でも再建できず

 低迷が続くなか、2016--17シーズンから指揮を任されたのが、過去に率いたクラブでことごとくリーグタイトルを手にしてきたジョゼ・モウリーニョ(現ローマ監督)だった。

 フロントもモウリーニョの要望どおりに、初年度からMFポール・ポグバ、MFヘンリク・ムヒタリアン(現ローマ)、DFエリック・バイリーの補強に総額約1億6650万ポンド(約268億円)を投入。さらにフリートランスファーでFWズラタン・イブラヒモビッチ(現ミラン)も獲得し、万全の陣容を整えた。だが、大金を使った肝心のポグバが鳴かず飛ばずで、結局は前年を下回る6位でシーズンを終えた。

 ただし、ヨーロッパリーグを制してCL出場権を獲得したほか、リーグカップも獲得したことは、さすが優勝請負人。モウリーニョの初年度は及第点の出来だった。

 長年エースを務めたルーニーが退団したモウリーニョの2シーズン目も、夏の市場で総額約1億4800万ポンド(約238億円)を使ってFWロメロ・ルカク(現チェルシー)、MFネマニャ・マティッチ(今季退団)、DFヴィクトル・リンデロフを補強。冬の市場でも約3000万ポンド(約48億円)を投じてFWアレクシス・サンチェス(現インテル)を獲得した。

 最終的にリーグ2位でフィニッシュしてCL出場権を獲得したが、優勝を果たしたペップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティとの勝ち点差は19ポイント。到底満足のいくシーズンとは言えず、指揮官に対する懐疑的な声も聞かれ始めていた。

 その不穏な空気が現実のものとなったのが、2018--19シーズンだ。それまでの2シーズンで550億円以上も投資したフロントだったが、その夏は指揮官の要望に応えられず。MFフレッジ、DFディオゴ・ダロト、GKリー・グラントに約7500万ポンド(約120億円)の投資をするにとどまり、そこからモウリーニョとフロントの関係性は崩れ始めた。

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