レアルの前に美しく散ったマンチェスター・シティ。バルササッカーの神髄を見た (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

挑戦者として決勝に挑むレアル

 CLの準決勝という大一番を、合計スコアで2点リードしているチームのサッカーではなかった。点差を忘れさせるぐらい、シティは正々堂々とプレーした。ブラジル人もポルトガル人もスペイン人もいるチームだというのに、清く正しい。狡くないのである。

 グアルディオラ監督の勝負事に淡泊な気質をそこに見た気がするが、試合が面白くなることを望む第三者であるこちらには、歓迎すべきものになる。この準決勝がサッカー史に残る名勝負となった大きな理由とも考えられる。グアルディオラの采配が、レアル・マドリードのマックス値を引き出してしまった。その結果、試合のエンタメ性は過去最高のものになった。

 そのことに気づいているマドリディスタも少なくないはずだ。かつてのバルササッカーの真髄をそこに垣間見た気がする。「つまらない1-0で勝つより、面白い試合をして2-3で負けたほうがまし」「勝つときは少々汚くてもいいが、敗れるときには美しく」と、筆者に対して言いきったヨハン・クライフ的な気質である。いいサッカーをして負けたシティは、まさしく美しい敗者だった。

 決勝戦。英国ブックメーカー各社は、だいたいリバプールに1.5倍、レアル・マドリードに2.5倍のオッズをつけている。競った関係にあるとは言えない。レアル・マドリードは、パリ・サンジェルマン戦(決勝トーナメント1回戦)、チェルシー戦(準々決勝)、シティ戦(準決勝)とすべて、下馬評で相手を下回っていた。決勝もこの流れにある。

 レアル・マドリードが、CL決勝戦で相手より下馬評で下回るケースは、1997-98シーズンのユベントス戦まで遡る。久々にチャレンジャーの立場で臨むことになる。強者リバプールは、さぞ戦いにくいに違いない。 

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