レアルの前に美しく散ったマンチェスター・シティ。バルササッカーの神髄を見た (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

時間稼ぎはほぼゼロだったシティ

 第1戦でエンタメ的にも、競技内容的にもサッカーのマックス値を超えた戦いを繰り広げた両チーム。2戦目もその流れの中にあった。シティのサッカーに問題があったわけでは全くない。

 第2戦を前にした下馬評でも、上回っていたのはシティだった。英国はブックメーカーのお膝元。購買意欲を掻き立てるため、地元チームに甘い傾向があるとはいえ、その分を差し引いても、両者間には大きな差があった。

 その予想に従えば、シティはまさかの敗退を喫したことになる。しかし、シティサイドに、番狂わせを許した時に抱く落胆はないはずだ。レアル・マドリードの選手、スタンドに詰めかけた地元ファンが歓喜する姿を見て、悔しさはこみ上げてくるだろうが、頭を抱えうずくまるほどの落胆ではないだろう。

 4-3でものにした第1戦同様、シティは何も悪くなかった。いいサッカーをしていた。後半28分、リヤド・マフレズに先制点をもたらすラストパスを送ったベルナルド・シウバのドリブル&パス。終盤の後半40分に、レアルのGKティボー・クルトワを泳がせるミドルシュートを放ったジョアン・カンセロ。後半33分、交代で入るや2本、ものすごく惜しいシュートを放ったジャック・グリーリッシュ。逆転された延長前半の終了間際にもフィル・フォーデンが巧みなヘディングシュートを飛ばしていた。燦然と輝くプレーは多々あった。シティは決定機の総数で、レアル・マドリードを上回っていた。 

 第1戦同様、斬るか斬られるかの撃ち合いを演じたわけだ。通算スコアで2点リードしていながら、90分間、最後まで攻め続けようとした。その足をレアルにすくわれた格好だ。残り数分となった段で、普通のチームならもう少しつまらないプレーをする。後ろで回したり、不必要に倒れてみたり、痛がったり、時間稼ぎのプレーをするものだ。実際、レアル・マドリード側にはリードすると、そうしたプレータイムを減らそうとする行為があったが、ジョゼップ・グアルディオラ率いるシティは、ほぼゼロだった。

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