レアルの前に美しく散ったマンチェスター・シティ。バルササッカーの神髄を見た

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 スポーツは筋書きのないドラマだと言われるが、今回のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝は、サッカーの面白さを再認識することになったエンタメ性抜群の2試合だった。

 初戦(リバプールホーム)を2-0で折り返したビジャレアル対リバプール戦の第2戦は、前半を終了して2-0。合計スコア2-2で並んだ。

 スペインリーグ7位の伏兵ビジャレアルが、準々決勝のバイエルンに続き、2試合連続で優勝候補を慌てさせる姿は痛快そのものだった。リバプールは後半、地力を発揮。合計スコア5-2で勝利したが、決勝戦を考えると、ここで苦戦しておいてよかったと捉えるべきだろう。すんなり順当勝ちを収めれば、チームのムードは決勝に向けて上昇しない。対戦相手に遅れを取ることは明らかだったからだ。

 その対戦相手を決める準決勝、レアル・マドリード対マンチェスター・シティ。マンチェスターで行なわれた第1戦は4-3だった。シティの楽勝ムードで始まったものの、終わってみればスコアどおりの大接戦。レアル・マドリードが追い上げて1点差とする展開から、サンティアゴ・ベルナベウで行なわれる第2戦を占えば、接戦必至だった。

 この一戦に勝利したチームが歓喜する量を考えれば、そのどちらかと決勝戦を争うリバプールには、それに匹敵する歓喜が求められていたのだ。いまリバプールは、ビジャレアルにもう少し苦戦してもよかったかぐらいの気持ちでいるのではないか。

マンチェスター・シティとの激闘を制し、優勝したような騒ぎのレアル・マドリードの選手たちマンチェスター・シティとの激闘を制し、優勝したような騒ぎのレアル・マドリードの選手たちこの記事に関連する写真を見る レアル・マドリード対シティ。120分に及ぶ死闘を制し、喜びを爆発させたのはレアル・マドリードだった。スコアは3-1。通算スコア6-5の逆転勝ちだ。しかも、89分を回った段まで、合計スコアでシティが3-5と2点リードする展開である。その20秒後、さらに後半の追加タイムに入って50秒後に、交代で入ったロドリゴが立て続けにゴールを決め、土壇場で追いつくという劇的さも興奮に輪をかける。 

 そして延長に突入した5分、カリム・ベンゼマにルイス・ディアスの足が掛かると、イタリア人のダニエレ・オレサト主審は、躊躇なくPKスポットを指さした。ベンゼマは自らペナルティスポットに立つと、身体を開くように右足インサイドで、右ポスト際に逆転弾を転がした。

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