鎌田大地の鳥栖時代から変わらぬ才能とは? EL準決勝第1戦で決勝弾 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

中盤へ落ちてプレーメイクも

 アンドレス・イニエスタやペドリなどもそこに類別されるが、余計なパワーやスピードなどは必要ない。卓抜したビジョン、スキルに"閃き"がかみ合えば、容易に相手を手玉にとることができる。完璧に近いコントロールとキック、そこでタイミングを自在に操ることで逆を取って、アドバンテージを奪えるのだ。

 味方を輝かせるだけでなく、自らも輝かせる。
 
 前半途中、鎌田はタイミングよく左サイドを駆け抜けて、コスティッチのパスを呼び込んでいる。相手と1対1になると、フェイントを入れて敵の足を動かすことで簡単に逆を取っている。シュートではなく、流し込んだクロスはブロックされたが、違いを見せた。

 後半に入ると、鎌田は積極的に中盤へ落ち、巧みなプレーメイクをしながら攻撃を潤滑にしていた。準々決勝のバルサ戦と違って、攻める時間も長いため、よりそのよさが目立った。そして53分には縦パスを引き出し、フリックして攻撃リズムを生む。そこからジブリル・ソウが左サイドを破って、シュートまで持ち込んだところ、中で詰めていた鎌田がこぼれ球を押し込んだ。

 シュートそのものは難しいものではなかったが、それに至る一連の動きに彼の才能が滲んでいた。

 70分には、天才さが皮肉に映るシーンがあった。

 カウンターで左サイドを持ち上がった鎌田は、裏に出かけたボレにスルーパスを送っているが、これは流れてしまった。ボレは抗議する表情を見せた。おそらくは「左を走っていたコスティッチに出すべきだった」ということだろう。多くの人がコスティッチへのパスを予想したはずだ。しかし、もしボレが信じて走っていたら、好機につながったはずのタイミングでのパスだった。

 78分、鎌田はカウンターで自ら抜け出し、相手ディフェンダーと1対1になっている。完璧なコントロールとコース取りだった。結局、わずかに出した相手の足に当たって、シュートは右ポストを直撃したが、あらためてクオリティの高さを見せたと言える。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る