グアルディオラの勝負弱さは「究極のロマンチスト」だから? シティを率いて6年目、哲学を曲げずにCL制覇なるか

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

ペップのペップたるゆえん

 ようやくその負のサイクルを抜け出せたのが、就任5年目の昨シーズン。ボルシアMG、ボルシア・ドルトムントを破ってベスト4進出を果たすと、準決勝ではパリ・サンジェルマンを撃破する。

 シティにとってクラブ史上初となるCL決勝戦の相手は、シーズン途中からトーマス・トゥヘルが指揮を執るチェルシー。下馬評ではペップのシティが優勢と見られていた。

 ところが、前半42分にチェルシーのカイ・ハフェルツが決めたゴールが決勝点となり、せっかくのCL制覇のチャンスを逃すことに。そして、その試合で議論の的となったのは、中盤にフェルナンジーニョやロドリを起用せず、イルカイ・ギュンドアン、ベルナルド・シルバ、フィル・フォーデン、そしてトップ下にケヴィン・デ・ブライネを配置するという超攻撃的布陣で大一番に臨んだペップの采配だった。

「勝つためにクオリティのある選手を揃える決断をした」とは、敗軍の将ペップの弁明だ。

 たしかに、そのハイリスクな攻撃的姿勢が敗因のひとつなのかもしれない。しかし、一発勝負の決勝戦でも自身の哲学を貫き通すあたりが、ペップのペップたるゆえんでもある。

 究極のロマンチストにとって、自身の哲学を曲げてまでタイトルを手にしても意味はない。アトレティコ戦のコメントを深読みするならば、今回も同じ姿勢でCLのタイトルを目指す構えと見て間違いなさそうだ。

 シティが準決勝で対戦するレアル・マドリードを率いるのは、ボブ・ペイズリー(リバプール)、ジヌディーン・ジダン(レアル・マドリード)と同様、CL史上最多となる優勝3回を誇る名将カルロ・アンチェロッティだ(チャンピオンズカップ時代含む)。

 しかもレアル・マドリードには、パリ・サンジェルマン、そしてチェルシーと、ホームのサンティアゴ・ベルナベウで2度も劇的な勝利を収めて勝ち上がってきた勢いもある。おそらく準決勝も、シティにとってはマドリードで開催される第2戦が鬼門となるだろう。

 果たして、就任6年目のペップはシティをCL初優勝に導くことができるか。CLという最も難しい舞台で理想と現実を両立させるためには、あとふたつの壁を乗り越える必要がある。

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