バイエルンを撃破し4強進出のビジャレアル。ドイツ人にはない「ラテンのリズム」が大番狂わせを成し遂げた (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AP/AFLO

日本人をも勇気づける勝利
 
 W杯で日本と対戦するドイツ代表にも同じことが言える。ビジャレアル戦のバイエルンを見ていると、ドイツ戦に必要となる要素が見えてくる。さしずめ後半43分、失点の原因を作ったパレホが見せたボール操作術などはその典型的なプレーだ。自軍深い位置でバイエルンの選手3人に囲まれながら、それを剥がすように前方で構えるジオバニ・ロ・チェルソに送った縦パスだ。まさにスペイン人にはあってドイツ人にはない魅力的なテクニックを披露した。

 ロ・チェルソからボールを受けたジェラール・モレノが、右サイドで構えるサミュエル・チュクウェゼに送った左足のパスも、ラテン人ならではの技巧的なキックだった。それがバイエルンを下す勝ち越しのアシストとなった。チュクウェゼは左足でバイエルンゴールを揺るがしたのだった。

 通算スコア1-2。人口比で言えば1対30。現在スペインリーグ7位のチームがブンデスリーガで首位を独走するバイエルンを下す、大番狂わせである。バイエルンはホーム、アリアンツアレーナを埋めた約7万観衆の前で醜態をさらすことになった。

 ビジャレアルのベスト4進出は、2005-06シーズンに次ぐクラブ史上2度目の快挙だ。他方、昨季ビジャレアルにレンタルで在籍していた久保建英にとって、これは悔しい結果だろう。CLでベスト4に進出するチームに在籍していたかった、が本音だろう。モレノ、チュクウェゼらとともにプレーしていた昨季が偲ばれる。

 16シーズン前、準々決勝でインテルを倒しベスト4入りしたときは、準決勝でアーセナルと戦い、通算スコア0-1で惜敗した。ビジャレアルは第2戦の終了間際、PKのチャンスを掴んだが、エースのフアン・ロマン・リケルメがそれを失敗。決勝進出を惜しくも逃している。

 今季はいかに。ビジャレアルの躍進には、日本人であるこちらまで勇気づける力がある。

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