久保建英にアギーレは「最高だった」。新指揮官は選手を「熱」で判断する (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

パッションを感じさせるプレー

 一方で久保自身はベンチスタートになり、不甲斐なさに憤慨していたのだろう。ピッチに入った時から熱を帯びていた。 

「Rabia」

 スペイン語で、「激怒、憤怒」という意味だが、それはリーガでピッチに立つ選手に求められる資質のひとつである。敵に対し、自分に対し、怒れるか。それはもちろん暴力ではなく、行動の集中力、機敏さのようなもので、自らを鼓舞する感情と言えるか。あのリオネル・メッシもバルサ時代は不当なファウルを受けた後、噴き出すような怒りを帯びると、決まって雷撃のようなプレーを見せた。

 アトレティコ戦の後半9分、久保は韓国代表イ・ガンインに代わって入っている。5-4-1の右シャドーのようなポジションだった。前線から積極的にプレスを仕掛け、場所を変えながら自在にボールを受け、5-2-3の右サイド、もしくはトップ下のようにも見えた。

 ラインの間でボールを受けることで、味方に猶予を与えている。巧みなボールキープ、持ち出しのスピードは敵の手を焼かせ、シメ・ヴルサリコ、ジョフレイ・コンドグビアなどにたて続けにイエローを誘発させた。彼のプレーを起点に、チームは踏みとどまり、攻撃する時間が長くなった。

 一方、久保は守備でも出場直後から相手ボールホルダーに激しく突っ掛け、ファウルにはなったが気概を見せている。アトレティコのビルドアップを分断。何より、五分五分のボールの競り合いになったところで、何度も必死に体を張って互角以上の戦いを見せ、負けていなかった。

 アギーレの求めるパッションを感じさせた。

 久保は本来、感情豊かなプレーヤーである。東京五輪で最後の試合後、インタビューで涙にむせぶ姿を見せたように、堪えきれないほどの激情を持っている。それが、彼のプレーを支え、突き動かしているのだ。

「タケはスペイン人よりもスペイン人的で、激しい感情表現を見せ、それで自らの集中力を高めるようなところがある」

 それがバルサの下部組織に在籍していたときの評判だ。

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