PSGのCL敗退にいくつもの要因。メッシ、ネイマールの不出来と昨季までと違う1点の重み (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

昨季まで違った1点の重み

 メッシが右ウイングとして構えたこともその傾向を後押しした。なによりメッシに、守備に加わる意思を感じなかった。PSGは右インサイドハーフのダニーロ・ペレイラが、メッシのカバーに回り、右SBアフラク・ハキミと2人でヴィニシウス、ベンゼマの動きに対応したが、メッシの存在が足枷になっていたことは確かだった。

 だが、ほどなくするとPSGも反撃に転じた。こちらも攻撃は左に偏った。主役は左ウイング、エムバペになる。この選手が左サイドを爆発的なスピードで駆け抜けると、レアル・マドリードは途端に慌てることになった。お互い、左から攻め、右で守ることになったため、ピッチには時計回りの流れが生まれた。

 前半39分、レアル・マドリードの右SBダニエル・カルバハルは、対峙するエムバペを向こうに回し、頑張って高い位置を取ったものの、ボールを失ってしまう。そして背後をエムバペに爆発的なスピードで走られ、シュートも決められた。

 これでレアル・マドリードは合計スコアを0-2とされた。アウェーゴールである。昨季までならダメ押しゴールに値した。ここからレアル・マドリードが2点を奪い通算スコアを2-2としても、軍配はアウェーゴールルールに基づきPSGに上がる。しかし、それが撤廃された今季、エムバペのゴールは付加価値のない単なる1点にとどまる。1点の重みは昨季までと大きく違っていた。

 この違いに敏感に反応したのはレアル・マドリードで、鈍感だったのはPSGだった。これがショッキングな失点ではないことにいち早く気づいて、レアル・マドリードはラッキーを実感することになったのではないか。対するPSGは事態を実感できぬまま、フワッとした気持ちでプレーしてしまった。そんな感じだ。

 ホームであることもレアル・マドリードにとってはラッキーだった。スタンドを埋めた観衆と一緒になってその事実に認識したことで、自らのラッキーを共有することができた。それが相乗効果となってピッチに反映されたと見る。

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