英雄シェフチェンコが世界へメッセージ。「ウクライナ人であることを誇りに思う」 (2ページ目)

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa akiko

呼びかけに応えるサッカー界

 我々の軍隊は侵略軍に比べれば明らかに劣っているが、勇敢で統率のとれた反撃をしている。ただ残念ながら、ウクライナ上空にはまだミサイルや市民に落とす爆弾を積んだ戦闘機が自由に飛んでいる。プーチンは殺人者だ。彼が今ウクライナにしていることは、世界に対する犯罪だ」

 スカイスポーツのインタビューで、彼はそう強い言葉で非難した。

 今のウクライナはサッカーどころではない。しかしシェフチェンコは、これまでになくサッカーに感謝をしているとDAZNの番組で語っている。

「今、私にとってサッカーは、私の声を世界に届けてくれる強力な武器だ。たとえば数日前、ミラン対インテルのダービー(コッパ・イタリア)の前に、現役時代何度もプレーしたサン・シーロスタジアムは大型スクリーンで私のメッセージを流してくれた。私は集まったサポーターに、平和を取り戻すためには世界中の支持が必要なこと、ともにこの無分別な殺戮を止めなくてはいけないと呼びかけた」

 メッセージを聞いた観客はミラニスタもインテリスタもなく、しばらくスタンディングオベーションで応えていた。

 シェフチェンコの呼びかけにイタリアは素早く反応した。パオロ・マルディーニをはじめとしたミランの元チームメイトや現役の選手たちは、すぐさま彼に連帯を示す。アイコンをウクライナカラーにし、SNSなどに戦争反対のメッセージを載せた。また、ほんの数週間前まで彼が率いていたジェノア(ジェノアの監督は成績不振で1月に解任されたばかりだ)の選手たちも同様の行動に出た。

 いや、それだけではない。イタリアサッカー界全体が団結し動き出す。昨日のピッチの敵は、今日の人生での友である。先週末には、サッカー協会はセリエA、Bすべての試合で開始を5分遅らせ、キックオフ前にこんな放送を流した。

「イタリアサッカーは平和のためにプレーします。戦争は不和を解決できるものではありません。すべてのキックオフを遅らせたのは現在進行中の危機に対する大きな懸念と、ウクライナにおける対話を喚起するためです。サッカーは政治ではありません。しかし声を大にして平和を叫びます」

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