久保建英、堂安律を超える可能性。坂元達裕がベルギーでプレーの幅を広げている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Belga Image/AFLO

小柄でもポストプレーができる

 移籍先を誤ったかに見えた。一番のセールスセールスポイントである自慢の切り返しは拝みにくい状況にある。右のタッチライン際から、左足で中央に蹴り込むと見せかける大きなフェイントからの縦突破。成功率は8割強だ。日本を代表する左利きのアタッカーといえば久保建英(マジョルカ)、堂安律(PSV)を想起するが、このフェイントに関しては、坂元が群を抜く。必殺と形容したくなる抜群の切れ味がある。

 現在の坂元は、その伝家の宝刀が抜けにくい状態にある。にもかかわらず、坂元はシント・トロイデン戦で存在感を発揮した。そこに大きな意義を感じる。

 3-5-2の2トップ。1トップ下は、言い換えれば真ん中だ。サイドに流れてボールを受ける機会より、真ん中でボールを受ける機会のほうが多い。そして坂元は左利きだ。右足もそれなりに使うが、9割方、左足1本でプレーする。左利きの選手が真ん中でプレーすると、進行方向は読まれがちだ。レベルが高くなるほど、プレスがきつくなるほど、その傾向は強まる。相手の餌食になりやすいものだが、坂元は左足のあちこちの場所を使ってボールを操作。技巧を駆使し、右にも左にもターンした。

 だが、それ以上に驚かされたのは、相手を背にしたプレーである。坂元は身長170センチの小兵。シント・トロイデンの大型センターバックに背後から身体を密着されると、潰されてしまうのではないかと一瞬、心配になるが、強烈なプレッシャーを浴びても、バランスを崩すことはない。しっかりとボールを収め、次への展開を図ることができる。

 これまで左ウイングとして披露してきた逆を取るフェイントに加え、真ん中でプレーすることで、トラップ技術の多彩さ、バランスのよさが際立って見えたのだ。

 森保ジャパンで、スタメン争いを展開中の久保建英、堂安律は、ともにウイングでも、1トップ下でもプレーした経験がある。しかし、坂元がシント・トロイデン戦で見せたような、相手の大型のセンターバックに対し、その懐に入り込むような動きでボールを収め、次なる展開の起点になるようなポストプレーができるだろうか。正面を向いてプレーするイメージしか湧いてこない。

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