マンU有利はどれほどのものか。CLに見え始めたアウェーゴールルール廃止の影響

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 大雑把に言えば、アトレティコ・マドリードとマンチェスター・ユナイテッドは互角に見えた。チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。アトレティコのホーム、ワンダ・メトロポリターノで行なわれたその第1戦の話である。

 前半7分、ジョアン・フェリックスのスーパーヘッドでアトレティコが先制すれば、マンチェスター・ユナイテッドは後半35分、19歳の新鋭、アンソニー・エランガの同点ゴールで1-1とした。

 試合を優勢に進めたのはホームのアトレティコ。マンチェスター・ユナイテッドは、なんとか追いついた格好だ。互角だとの印象は、ホームとアウェーの関係を加味したうえでの見解になる。オールド・トラッフォードで行なわれる第2戦(3月15日)が楽しみになるが、昨季までならこの1-1というスコアは、互角の関係ではなかった。エランガのゴールがアウェーゴールに相当していたため、マンチェスター・ユナイテッドが60対40ぐらいの関係で有利な状況になっていた。

アトレティコ・マドリード戦で同点に追いつき、ホッとした表情のクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)アトレティコ・マドリード戦で同点に追いつき、ホッとした表情のクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)この記事に関連する写真を見る ただ、今季からUEFAは、CL、ヨーロッパリーグなど、主催する試合でアウェーゴールルールの採用をやめた。CLでは今回の決勝トーナメント1回戦から適用される。

 アウェーゴールに重みを持たせたこのルール。スタートは1965-66シーズンのカップウイナーズカップ(かつて欧州3大カップのひとつに数えられた各国のカップ戦の勝者による戦い。1998-99シーズンに終了)だとされる。すなわち56年の歴史に今回、幕を閉じたわけだ。

 筆者が欧州サッカーを取材するなかで、感激させられたことは多々あったが、このアウェーゴールルールはその最たるものだった。CLの決勝トーナメントの試合をホーム&アウェー2試合、現地で続けて観戦すると、その魅力が手に取るように理解できた。

 発案者はUEFAのスタッフだとされるが、日本在住の筆者の目には、画期的な仕掛け、味付けに映った。ノーベル賞にスポーツ部門の賞があれば受賞間違いなしと言いたくなる、まさに発明級のアイデアに思えた。

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