バルサに見えた復活への道筋。「攻撃こそ最大の防御」を体現する戦新戦力4人が躍動し、シャビも手応え (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

【ふたりの「偽9番」候補】

 アウベス効果を一番受けたのはトラオレかもしれない。

 トラオレは、もともとラ・マシア育ちで、バルサのプレーを体にしみ込ませている。バルサでトップデビューした17歳当時は、ネイマール、リオネル・メッシのようなアタッカーがいて、クラブのラ・マシア軽視もあって、プレミアリーグに新天地を求めた。そこで痩せて小さかった肉体をプレミアリーグ用にカスタマイズし、スピード、パワーを徹底的に高めた。今や肉弾戦もどんとこいの、ラグビーのウイングさながらだ。

 屈強な体が人目を引くが、コントロール&キックは紛うことなきバルサ仕込みである。アトレティコ戦も、対峙したスペイン代表マリオ・エルモソを子ども扱いしていた。緩急の変化をつけたドリブルで抜き去り、ガビのヘディングゴールを的確にアシスト。近年、右サイドでは左利きの選手が中へ切り込む形がスタンダードになっており、右利きで縦を突破するスタイルは古典的とも言えるが、むしろ新鮮さがある。

 シャビ監督が就任当初から苦心してきたのが、ボールをつないだあとに相手守備を崩せるウイングのポジションで、トラオレは救世主となるかもしれない。

 トップの人材も、シャビは模索し続けてきた。メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨング、フェラン・ジュグラらが候補だった。だが、それぞれ悪くはないものの、帯に短したすきに長し、の感は否めない。得点力は高くてもボールを持ちすぎてしまったり、ポストワークはうまいが得点力が平均的だったり、動きの質は高くても高いレベルでの経験が少なすぎたり......。

 そこでも、マンチェスター・シティから獲得したフェラン・トーレスは、バルサの中心となれる器だろう。いわゆる「偽9番」として攻撃をけん引することができる。周りと連係する技術だけでなく、ゴールを仕留める技術も持つ。

 アトレティコ戦も「偽9番」として前線をゆらゆらと動き、相手ディフェンスを幻惑。自らの動きで相手を引き出し、味方を誘っていた。それを縦横自在に行なえることで、パスのテンポを上げ、攻撃を活性化できる。左サイドをガビが破って折り返したシーンでは、ニアでつぶれてファーから入ったアウベスをフリーにしていた。

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