ウーゴの死と複雑すぎるマラドーナの相続争い。野次馬を楽しませる一家のその後 (2ページ目)

  • 三村高之●文 text by Mimura Takayuki
  • photo by AFP/AFLO

【莫大な遺産か、それとも借金か】

 ディエゴは生前、顧問弁護士のマティアス・モルラに資産運用を任せていた。口座残高よりはるかに多い資産の運用は主にブラックマーケットで行なわれているため、ディエゴの名前は出てこない。遺族はモルラに対し、横領や着服の疑いをかけている。

 動産、不動産も数カ国で保有しており、ロールスロイス、フェラーリなどの高級車数台、ブエノスアイレスの豪邸、マイアミの別荘、ダイヤの指輪、コナミがサッカーゲームで支払う肖像権料などの額もかなりのものとなる。これらを現金化して遺産額を明らかにするため、昨年末、裁判所主導でこれらの一部を出品するオークションが企画されたが、準備期間が短く応募者不足で、後日、あらためて開催されることとなった。

 遺産にはプラスのものもあればマイナスのものもある。

 ディエゴはナポリ在籍時代に多額の脱税で起訴された裁判の結果、2600万ユーロ(約32億円)の支払い命令を受けている。しかし、彼は脱税そのものを真っ向から否定しており督促も完全に無視していた。イタリアに行くと空港で一時拘束されることもあったが、指輪や腕時計を差し押さえられる程度で済んでいた。だがイタリアの当局は、今回の相続を機に、しっかりと全額を回収すると表明している。もし遺産総額がこの負債額を下回れば、相続人は借金を引き継ぐことになってしまうのだ。

 さらに問題なのは、誰が相続人になるかだ。ディエゴには、2003年に離婚するまで20年間連れ添った前妻クラウディア・ビジャファニェとの間に、ダルマ(34歳)とジャニンナ(32歳)という娘ふたりをもうけている。ジャニンナは、先ごろ引退した元アルゼンチン代表のセルヒオ・アグエロと03年に結婚し13年に別れるが、ディエゴとアグエロというサッカーの最強遺伝子を持つベンハミンを出産している。

 ディエゴが頑なに否定しながら、裁判の末に認知したのがディエゴ・ジュニア(35歳)とハナ(25歳)だ。ディエゴ・ジュニアはナポリ時代の不倫相手との息子で、長女ダルマより年上。つまりディエゴの第一子ということになる。ハナは別の女性との間の娘で、2014年に認知された。認知後はそれまでの拒絶反応が嘘のように良好な親子関係となり、母親の違うジュニアとハナも兄妹のように仲がいい。だが、元正妻との間の娘であるダルマとジャニンナは彼らを嫌悪しており、ハナとはしばしばバトルを繰り広げている

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