中村俊輔が選ぶ歴代フリーキッカートップ10。本人がお手本にしていた選手とは? (3ページ目)

  • 篠幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

7位:ジャンフランコ・ゾラ(イタリア/元チェルシーほか)/木村和司(日本/元横浜マリノス)

 ゾラと和司さんは、体の柔らかさ、バックスイングからフォロースルーまでそっくりなんですよ。だから同率7位に入れました。

 2人とも身長があまりないので、恥骨からボールまでが近くなります。足の振りもコンパクトなので、いつもキックに安定感があるんです。2人のキックが枠から大きく外れることは、ほとんどありませんでした。そのキックから繰り出す、壁を越えて上から降ってくるように落ちる弾道がとにかく好きでしたね。

 2人はペナルティーエリアの外ギリギリの位置からでも、FKを決めちゃうんです。例えばリオネル・メッシ(アルゼンチン/パリSG)もそうですが、今の選手たちは、その位置からのFKでは、足にボールを乗せるように軽く"チョン"と蹴ります。でも2人は普通に遠くから蹴るようなスイングスピードで、インパクト時に普段のポイントより少し上あたりを擦り上げることで、ボールスピードを出しながら壁を越えて落とすボールを蹴れるんです。

「どうやったら2人のように上から落とすようなキックができるんだろう」と、よくキックをマネしました。この落とすキックに関しては、2人はちょっと抜けた存在でしたね。

6位:ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン/元ボカ・ジュニアーズ、ナポリほか)

 子どもの頃にマラドーナのプレーを見てから、彼のマネばかりしていました。ドリブルもそうだし、予想外のプレーもそうだし、FKにおいても影響を受けた最初の人です。キャプテンマークを巻いて、チームを先頭で引っ張っていく姿には本当に憧れました。

 マラドーナは、自分でドリブルして、自分でファールをもらって、そのFKを自分でゴールにできる。ファールをもらわなければ、ドリブルで突破してゴールを決めてしまう。

 キックの質や弾道はそこまで驚異ではないんですけど、必ず枠に入れてくるし、遠い距離でも決めてくる。

 僕が一番好きなFKは、1985年のナポリ対ユベントス戦で決めたゴールです。ペナルティーエリア内の間接FKで、味方がチョンと横に転がしたんです。ただ、マラドーナは下を向いて全然ボールを見ていなくて、まったく彼のタイミングではなかったんですが、それでも普通に壁を越えてニアに決めちゃうんです。

 普通の選手であれば、焦って蹴って壁に当てちゃうと思います。「サッカーがうまい人はどんな状況でも、何をやらせてもうまいんだな」と思いました。

 昔の10番の選手は、ドリブルもパスもキックもうまいので、だからFKもできる。「FKの練習はちょっとしておこうかな」くらいだったと思うんです。僕は昔からそういう10番タイプのフリーキッカーが好きで、自分もそうなりたかったですね。
(5位~1位を発表。後編につづく>>)

中村俊輔 
なかむら・しゅんすけ/1978年6月24日生まれ。神奈川県横浜市出身。桐光学園高校から97年に横浜マリノス入り。その後レッジーナ(イタリア)、セルティック(スコットランド)、エスパニョール(スペイン)と欧州で活躍し、2010年に横浜F・マリノスに戻ってプレー。17年からジュビロ磐田、19年からは横浜FCでプレーしている。日本代表国際Aマッチ98試合出場24得点。これまで数多くのFKを決めて、観衆を魅了してきた。

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