中村俊輔が選ぶ歴代フリーキッカートップ10。本人がお手本にしていた選手とは? (2ページ目)

  • 篠幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

9位:ジーコ(ブラジル/元フラメンゴ、鹿島アントラーズほか)

 ジーコは、自分のなかではディエゴ・マラドーナと同列です。ただ、右利きのジーコより、左利きのマラドーナをより参考にしていたので、この順位になりました。2人のプレーを見て「10番とはこういうものだ」と植えつけられましたね。

 僕が子どもの頃、海外サッカーは『ダイヤモンドサッカー』くらいしか見る機会がなくて、イングランドの試合が多かったんです。だからなかなかジーコの映像を見られなかったんですが、スポーツショップでフラメンゴ時代のビデオを手に入れて、それを見て勉強していた思い出があります。

 ジーコはキックの時に、ボールを擦り上げるように蹴ったあと、足を斜めに振り上げるのがすごく印象的でした。昔はそういう蹴り方をする人が多かったんですよね。

 FKで壁の頭を越して、ニアサイドに決めるのが得意な選手はたくさんいます。でもジーコはファーサイドに決めるのもすごく得意で、一番うまいと思います。インサイドキックで足に乗せるように蹴って、ファーの上の角に落として決める。その弾道がすごく綺麗で、「こういう弾道で入るんだ」と感動して、その映像を何度も見ました。

 ジーコが日本代表監督の時にプレーしましたが、FKについては特に何も言われませんでした。ジーコが僕のキックを見て、どう思っていたのかは聞いてみたかったですね。

 でも一つだけジーコからアドバイスされたことがあります。それは「試合の前日に蹴っておくのは大事だけど、試合当日のアップの時に1本だけでいいから集中して、蹴っておいたほうがいい」ということ。試合当日の雰囲気とか、ピッチコンディションのなかで蹴っておいて、それを試合で修正できればいいと。それは今でも印象に残っています。

8位:シニシャ・ミハイロビッチ(セルビア/元ラツィオほか)

 ミハイロビッチとは、レッジーナ時代に対戦しました。DFであれだけのキックができる人はなかなかいない。それだけ価値が高いということで、この順位にしました。

 当時のセリエAにはいいキッカーがたくさんいたなかで、参考にしていた選手の一人でした。

 彼は身長もあるので、ヒザをあまり曲げない蹴り方をするんですけど、蹴り足のバックスイングをものすごく後ろまで振りかぶるんです。そこから叩くインパクトが強烈で、僕はあれが好きでした。

 ゴールまでの距離が長いFKだと、カーブをかける蹴り方では曲がりすぎてうまく枠を捉えられないんです。遠い距離から決めるには、彼のようにインパクトの強さを大事にして、あまりカーブをかけないようにすることが大切になります。彼のインパクト時の足の出し方と足首の角度を、僕はものすごく注目して見ていました。

 ラツィオ時代にFKでハットトリックを達成しています。僕もそんなのはやったことがありません。あの時代のセリエAはGKも世界トップレベルの選手が集まっていました。そのなかでDFがあれだけFKを決めて、キッカーとして存在感があったというのは、ちょっと異常だったと思いますね。

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