チェルシーの強さはなぜか。代表チーム的マネジメントを見せるトゥヘル監督の戦略的戦術 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【戦術単体より少し大枠の戦略的戦術の手腕】

 GKにはエドゥアール・メンディ(セネガル)とケパ・アリサバラガ(スペイン)。3バックにはアントニオ・リュディガー(ドイツ)、チアゴ・シウバ(ブラジル)、アンドレアス・クリステンセン(デンマーク)がいるが、トレボ・チャロバー(イングランド)、セサル・アスピリクエタ(スペイン)、マラング・サール(フランス)が控えている。

 MF陣はさらに層が厚い。エンゴロ・カンテ(フランス)、マテオ・コバチッチ(クロアチア)、ジョルジーニョ(イタリア)、ルベン・ロフタス=チーク(イングランド)の4人のうち2人が中央を担当。ウイングバックは右にリース・ジェームズ(イングランド)かアスピリクエタ、左にマルコス・アロンソ(スペイン)とベン・チルウェル(イングランド)。

 シャドーはメイソン・マウント(イングランド)、カラム・ハドソン=オドイ(イングランド)、カイ・ハフェルツ(ドイツ)、ハキム・ツィエク(モロッコ)、クリスチャン・プリシッチ(アメリカ)、ティモ・ヴェルナー(ドイツ)、サウール・ニゲス(スペイン)、ロス・バークリー(イングランド)と8人もいる。1トップはロメル・ルカク(ベルギー)が絶対的だがヴェルナーも控えている。いずれも各国の代表選手たちで、実力もかなり接近している。

 リュディガーとジョルジーニョがプレーするのは確定的だが、飛び抜けてスーパーなのはルカクだけだろう。全体的に高いレベルで均衡している集団で、代表チーム的な選手構成と言える。

 過密日程下で必須となるローテーションに向いている。選手が代わってもほとんど戦力がダウンしない。戦術の単純さによってさまざまな選手起用が可能。これだけ多彩な選手を連係させるには、オーダーメイドにしてしまうと身動きがとれなくなるが、ある意味で誰がやっても同じ戦術であり、同時に人によって変えていい余地を残しているのも強みになっている。

 トゥヘル監督は細かい戦術指導に定評があるが、それよりもチームが置かれている状況で最高のパフォーマンスを維持するための戦略として、戦術を使っているわけだ。

 中庸路線なので図抜けた強さは発揮しないかわりに、ライバルがパワーダウンした時に勝ち残れる力を持っている。コロナ禍の2シーズンで連続してCLのファイナリストになったのは、トゥヘル監督のマネジメント能力によるものだろう。

 戦術単体ではなく、もう少し大枠の戦略的戦術の手腕こそ、トゥヘル監督の真骨頂なのではないか。

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