古橋亨梧の「キョウゴール」に沸くセルティック。加入わずか5カ月で現地は中村俊輔らレジェンド級の扱い

  • アレックス・オヘンリー●文 text by Alex O’Henley
  • 井川洋一●翻訳 translation by Igawa Yoichi

【ラーション以来、最高のストライカー】

 キョウゴが決勝で決めた鮮やかな2発──特に相手GKの頭上を抜いたループでの2点目──は、セルティック屈指のレジェンド、ヘンリク・ラーションを想起させた。スウェーデン代表史でも指折りの元ストライカーは、1997年から7シーズンの間に8つのタイトルの獲得に貢献。そんなスコットランド・プレミアシップ史上最高の点取り屋と、キョウゴはすでに比較されているのだ。

 決勝の相手だったハイバーニアンの元FWで、現在はクラブ公式『ヒブスTV』で解説者を務めるタム・マクマナスは決勝終了直後に、キョウゴは「このリーグでラーション以来、最高のストライカーだ」とSNSにつぶやいた。

「彼の動きは実にすばらしい。(相手は)常に警戒しなければならないし、それを怠ると、今日のヒブス(ハイバーニアンの愛称)のようにツケを払うことになる。センセーショナルな選手だ」

 実はキョウゴとラーションは、セルティックに加入した経緯にも共通点がある。彼らを獲得したのは、直前にJリーグで指揮を執っていた監督だ。サンフレッチェ広島を率いていたビム・ヤンセン(オランダ)は、ポステコグルーと同様にセルティックの再建を託され、外国籍のストライカーに白羽の矢を立てた。

 ラーションは65万ポンド(現在のレートで約9800万円)、キョウゴは460万ポンド(同6億9000万円)と、それぞれの時代の市場でバーゲン価格の移籍金だった。そしてどちらの新戦力も、リーグカップ決勝で得点を決め、就任1年目の指揮官に最初のタイトルをもたらしている。

 もちろん、セルティックの歴史には以前から偉大な日本人選手の名が刻まれている。"ナカ"の愛称で親しまれたセットプレーの王様、中村俊輔だ。ゴードン・ストラカン監督(スコットランド)が統率した2005年~09年、彼はその左足で3回のリーグ優勝と指揮官初のチャンピオンズリーグ16強入りに大きく寄与した。ナカもキョウゴも特別な武器を装備。前者は魔術的な左足のキック、後者は判断と足の速さに加え、非凡な決定力を持っている。

 ただしナカはグラスゴーに降り立つ前に、イタリアのレッジーナでプレーしており、欧州の環境に慣れていた。その点では、キョウゴのほうが大変なはずだったが、彼は言語も習慣もピッチ状態も何もかも異なる極東から参戦し、即座に本領を発揮しているのだ。

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