CLグループステージ全勝のアヤックス。各ポジションのプレーを継承する伝統のスタイルは健在

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 3年前のフレンキー・デ・ヨングとはタイプが違う。ただ、エドガー・ダービッツやトマーシュ・ガラーセクのような守備力とハードワークの名選手もいたので、アヤックスに全くいなかったわけではない。

 アルバレスはビルドアップ時にはむしろデコイ(おとり)になっていて、彼自身が局面を動かすというよりも、定石どおりのライン間に立って相手を引きつけ、前方へのパスはCBのマルティネスやインサイドハーフから下りてくるライアン・フラーフェンベルフに任せている。

 19歳のインサイドハーフ、フラーフェンベルフも異質なタイプだ。機敏な技巧派が定番のポジションにしては190㎝と例外的な長身である。ユース出身、あのクラレンス・セードルフの最年少デビュー記録を塗り替えた逸材。アヤックスのインサイドハーフにしては大きすぎる感じがするけれども要件は満たしている。狭いエリアでボールをコントロールして捌く能力は高く、フランク・ライカールトの後継者なのかもしれない。

 左利きの右ウイング、アントニーも注目の21歳。チェルシーへ移籍したハキム・ツィエクの後釜だが、クイックネスはアントニーのほうが上だろう。同じブラジル人のネレスとポジションを争うが、ネレスは左が多いので棲み分けはできている。

 さて、現在の注目選手の紹介に過去の名手たちを引き合いに出したのにはわけがある。アヤックスにはそれぞれのポジションにモデルとなる先人がいて、先輩たちの技術を伝承していく手法を採っているからだ。

【変わらない「遊び」】

 アヤックスの戦術的な骨格は決まっている。多少の紆余曲折はあったにしても、大まかに言えば1960年代あたりから変わっていない。年季の入り方はバルセロナ以上で、自らのプレースタイルへの信頼で突出した存在と言える。それぞれのポジションに求められるプレーが決まっているので、継承が可能だ。

 1998年フランスW杯のオランダ代表は、レジェンドOBをスタッフに加え、「スモール・ティップス」を伝える手法を導入していた。チーム全体の戦術はもうほぼ決まっているので、それよりも各ポジション特有の技術を伝えることに重きを置き始めたわけだ。

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