CLグループステージ全勝のアヤックス。各ポジションのプレーを継承する伝統のスタイルは健在

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 1980年代にアヤックスの守備戦術を抽出してゾーンディフェンスと掛け合わせたのがアリゴ・サッキ監督のミラン(イタリア)であり、ほぼ同時期にパスワークの部分を整理拡大したのがクライフ監督のバルセロナ(スペイン)だった。

 ミランのプレッシングはゲーゲンプレッシングとしてユルゲン・クロップ監督のリバプールや、いわゆるラングニック派のスタイルに継承されている。アヤックス直系のバルセロナはジョゼップ・グアルディオラ監督の時代にピークを迎え、グアルディオラの移転に伴ってバイエルン、マンチェスター・シティ(イングランド)に伝播した。いずれも源流はアヤックスである。

【継承される伝統】

 今ではバルセロナのスタイルとして認識されているが、元祖のアヤックスも伝統を継承していて、後方からの着実なビルドアップ、2人のウイング、プレッシングによる即時奪回という特徴は色濃く残っている。

 センターバック(CB)の左側を担当するリサンドロ・マルティネスはアヤックスらしいDFだ。23歳のアルゼンチン人、左利き。175㎝とCBとしてはかなり小柄だが、ドルトムント戦では194㎝のアーリング・ハーランドを抑え込んでいた。機敏なラインコントロールでハーランドをスピードに乗せなかった。ただ、守備面以上に目立つのが球出しのうまさ。長短のパスをピタリと届ける精度の高さは、いかにもアヤックスのCBと言える。

 CBの左側は、パスのアングルから言って左利きであるべきというアヤックスの考え方から、左利きCBはフランク・デブール、クリスチャン・キヴ、トーマス・フェルマーレンといった名手を輩出している。マルティネスもその列に加わるだろう。

 アヤックスの特別なポジションである6番(バルセロナなら4番)に起用されているエドソン・アルバレスは伝統からは外れている。中盤の底に位置するこのポジションには、バルセロナのセルヒオ・ブスケツのような技巧とインテリジェンスに図抜けたタイプが定番なのだが、アルバレスは技巧派というよりハードワーカーなのだ。

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