バルサ、21年ぶりCL敗退の実像。1年でバイエルンに追いつくことはできるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

【明白だったバイエルンとの力量差】

「Desborde」

 スペイン語で「崩し」という意味の言葉が、次の段階になるだろう。ポゼッションだけなら難しいことではない。勝負を制するには、サイドでスピード、スキル、コンビネーションを用い、崩せる選手が欠かせない。その最たる選手がメッシだったわけだ。

 リーガ初陣のエスパニョール戦、シャビは左利きアタッカーのイリアス・アコマックを右FWでデビューさせた。下部組織ラ・マシアでは各カテゴリーに「メッシの後継者」がいるが、イリアスもそのひとり。左には右利きのガビを左FWに配置し、これはジョゼップ・グアルディオラのアンドレス・イニエスタを生かした起用に近い。

 ただ、十分な迫力は出なかった。イリアスは90分間、相手を脅かす力はなく、後半は代わって入った右利きのエブデ(アブデッサマド・エザルゾウリ)が純粋な右ウィングでプレー。改善はあったが、決定打はない。ガビも、イニエスタのような適応はできなかった。

 2戦目となったCLのベンフィカ戦でシャビは変則的3-4-3を用いている。右には「崩し」役として左利きのユスフ・デミルを起用し、フレンキー・デ・ヨング、ニコ・ゴンサレスのどちらかが前線に出て、4-4-2になる可変式だ。しかし結果は攻めきれず、ドローに終わった。

 3戦目はリーガのビジャレアル戦。ベンフィカ戦と同じ変則的3-4-3だったが、右はエブデが先発した。序盤は活性化していたものの徐々にパワーダウン。カウンター主体で1-3とアウエー戦を制したが、攻撃のリズムの悪さが露見した。

 4戦目、5戦目はセルジーニョ・デストを起用も、脅威を与えられなかった。献身は見せたが、ゴールの予感がまるでない。ガビもひとつ前のポジションだと、相手と潰し合うことに終始した。

 シャビは「崩し」の最適解を見つけるのにも苦労している。

 バイエルン戦に左サイドで先発したウスマン・デンベレはキーマンで、唯一怖さがあった。トップフォームのデンベレは完全な両利きだけに、どちらのサイドでも似た水準の攻撃を見せる。しかし、単騎では厳しいだろう。

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