なぜメッシがバロンドールを獲得できたのか。レバンドフスキにはなかったものと「世界最高選手」のイメージの差 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 快進撃を続けるバイエルンのエース、レバンドフスキとは歴然とした差がある。所属クラブの実績では、メッシは分が悪い。

 しかし、今年7月のコパ・アメリカで、アルゼンチンは決勝でブラジルを破って、南米王者になっている。メッシは得点王となってチームをけん引。代表チームでは初のビッグタイトルを手にした。

「コパ・アメリカ優勝のおかげで、バロンドールを獲れたと思う」

 メッシ本人も認めているとおり、このタイトルが決定打になったのだろう。

 バロンドールの投票は、世界各国180近い地域から選定された記者が、ノミネートされた30人の選手から1~5位を選ぶという方法で行なわれる。メッシの南米での活躍が強いインパクトを与えた地域もあっただろう。その地域の記者たちはCLなどでの功績以上に、南米アルゼンチン代表でのメッシを高く評価したはずだ。

 一方で、分別のある記者たちの票が割れたということもあるだろう。最高峰CLで優勝したチェルシーの選手から選出しようと、3位ジョルジーニョ、5位エンゴロ・カンテにも票が集まった。結果的にこれが、欧州での活躍で選ばれるべきだったレバンドフスキの票を"奪った"。メッシは漁夫の利を得たことになる。

 この現象は、2年前のバロンドールでも起きていた。リバプールが旋風を巻き起こし、欧州王者になったシーズンだったが、フィルジル・ファン・ダイク、サディオ・マネ、モハメド・サラー、アリソン・ベッカーと、チームメイト同士で票を取り合うことになった。その結果、2位のファン・ダイクは7ポイント差でメッシの後塵を拝することになったのだ。

 また、「世界最高選手」の称号が焼きついているメッシを、記者たちは1~5位で外すのは難しかっただろう。もし筆者自身が投票できたとしても、トップ5から外したとは思えない(個人的にはカリム・ベンゼマが1位だ)。以前ほど絶対的ではないが、メッシのプレーは今も華がある。現代サッカーでは集団性が高まり、個よりも組織が目立つなかで、彼はたったひとりでも切り込み、ゴールを奪えるのだ。

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