シャビ新監督は何をやろうとしているか。「これぞバルサだ」実現へ正統後継者による原点回帰の戦術とは (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 この中間ポジションへのパスも、今では攻撃の定石となっている。そこで「間受け」を担当するのはウイング、あるいはトップ下とチームによって異なるが、ここへパスをつなぐことで相手DFを動かして隙をつく手法はよく知られている。

 シャビ監督はエスパニョール戦でインテリオール(インサイドハーフ)に間受けを担当させた。これはシャビらしいところで原点回帰と言える。もちろん相手も承知の戦法なので、そこへつながせまいと四角形または三角形を狭める。しかし、狭めることでその手前が空き、同時に相手MFはディフェンスラインに吸収されてしまう。

 そこでバルサは、セルヒオ・ブスケツにボールを下げておいてから、一列化した相手の裏への飛び出す選手にパスを送り、チャンスを作っていた。

 ただ、このバルサ・スタイルはもはや一般化していて、シャビ監督の戦術は目新しいものではない。

「私とクーマン(前監督)の4-3-3が違うわけではない」(シャビ監督)

 原理は同じだ。しかし、実際には違ってくるだろう。クライフとファン・ハールが同じでなく、ペップとルイス・エンリケが同じでなかったように。

 みんなが同じものを見ているようで、クライフとペップとシャビには違うものが見えている。そして、この3人は自分たちのプレースタイルを誰よりも信じている。よく議論されているような、スタイルか勝利至上主義かではなく、このスタイルこそ勝利への最短距離という確信。それが最大の違いだ。

<シャビの眼が変えるバルサ>

 ベンフィカ戦、つまり就任2試合目でシャビ監督は早くも微修正を行なっている。

 中間ポジションの間受け担当からフレンキー・デ・ヨングを外した。システムは3-4-3に変え、デ・ヨングはブスケツと並ぶ位置へ下がり、左側の間受けは左ウイングのガビに代えている。右側は右ウイングのユスフ・デミルがタッチラインいっぱいに張って、ニコ・ゴンサレスの間受け担当は変わらず。左側だけ少しバランスを変えた。

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