シャビ新監督は何をやろうとしているか。「これぞバルサだ」実現へ正統後継者による原点回帰の戦術とは (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 シャビ監督がグアルディオラと同じ成果をあげられるかはわからないが、シャビは指揮を執る前から正統後継者とみなされている。クライフもペップもそう言っていた。

<原点にして最強という考え方>

 シャビ監督の初陣は国内リーグのエスパニョール戦。1-0で勝利したあとの2試合目がチャンピオンズリーグのグループリーグ、ベンフィカ戦(0-0)だった。

 まだたった2試合にすぎないが、シャビ監督はペップよりクライフに近い、より原理主義者なのだろういうことは察せられた。シャビ監督下のバルサはバルサ・スタイルの基本のキに立ち返っている。

 システムはエスパニョール戦が4-3-3、ベンフィカ戦が3-4-3。この2つはバルサ・スタイルで最も使用頻度の高い2大システムだ。

 まず、GKからビルドアップしていく。その際、3トップは敵陣に張る。相手はバルサの3トップに対して4人を残す。つまり、バルサ陣内にいる相手選手は6人と決まる。バルサ側はGKがビルドアップに参加するので8人。2人の数的優位が確定する。

 この2人のフリーマンをうまく活用しながら、ボールを確実に敵陣へ運んでいく。これが第一歩だ。今では多くのチームがこのビルドアップを行なっているが、バルサはその先駆だった。

 もし、相手が3人のFWに対して3人のDFだけを残し、フィールドプレーヤーをすべてマークする、1対1を10個作るプレッシングをしても、バルサは自陣内でまだ1人の数的優位がある。

 前線で1対1になっているFWへロングパスを届ければ、1人外せばあとはGKしかいない状況を作れる。つなぐだけでなく、相手の出方次第で一気にひっくり返してしまうことまで含めてのビルドアップになっている。

 敵陣へボールを運んだ後は、中間ポジションへのパスを崩しのトリガーにする。

 中間ポジションとは、相手のサイドバック、センターバック、MFのいずれにもマークされない場所。相手が4-4-2なら、「4-4」の守備ブロックを組んだ時にできる3つの四角形の中心部にあたる。

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