カタールW杯一番乗りのドイツ。新監督と絶妙な選手構成でリベンジを期す (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 後任にはリバプールのユルゲン・クロップ、シャルケやライプツィヒなどを率いたラルフ・ラングニックなどの名前が挙がったが、彼らを抑えて代表監督の座に就いたのはハンジ・フリックだった。私個人は、最高の人選だったのではないかと思う。

 フリックは監督としてのキャリアこそ浅いが、2006年から2014年まで代表のアシスタントコーチも務め、2008年のユーロでレーヴが退場になった(準決勝のポルトガル戦)際は、チームを率いて勝利に導いたこともある。ブラジルW杯での優勝も経験し、代表でのありかたも、その空気も、そして選手たちのことも熟知している。

 監督としての手腕も見事だ。2019-2020シーズンの半ばにアシスタントからバイエルンの監督に昇格すると1年目でいきなりリーグ、チャンピオンズリーグ、DFBポーカルの三冠を達成し、その後はドイツスーパーカップ、UEFAスーパーカップ、クラブワールドカップも勝ち取っている。

 フリックが監督に就いてから、ドイツはここまで7戦7勝。いち早くカタール行きを決めることができた。ドイツサッカー界においては久々に明るいニュースだったろう。

 ただ、これでドイツが再び強くなったと手放しで喜ぶのは早計だ。ドイツの入った予選のグループJはリヒテンシュタイン、アイスランド、アルメニア、ルーマニア、北マケドニアと、メンツにかなり恵まれていた。ドイツが首位でないことのほうがおかしい。イングランドとポーランド、フランスとウクライナ、スイスとイタリアが同組に入っている他のグループに比べても、難易度は格段に低かっただろう。

 いずれにせよカタール行きのチケットは手に入れた。これからの1年、ドイツはW杯に向かって、腰を落ち着け、新しいチームを作ることができる。カギを握るのはフリックの采配だろう。新監督は代表への信頼を取り戻し、チームにいい空気を作ろうとしている。

 現在のドイツの強みは、若手とベテランのバランスが絶妙に取れていることにある。チームにはすべての年代の優秀な選手がそろっている。フリックはベテランを追い出すのではなく、ベテランのそばに優秀な若手をうまく配することで、経験とパワーを融合させようとしている。

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