カタールW杯一番乗りのドイツ。新監督と絶妙な選手構成でリベンジを期す

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

強豪国のカタールW杯(2)~ドイツ

 今回のW杯予選で、世界で最初にカタール行きを決めたのはドイツだった。10月11日の欧州予選第8節で、どこよりも早くグループ1位を確定させた。

 ドイツはここ数年、受難の日々が続いていた。

 最初の受難はディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2018年のロシアW杯。ドイツは同じグループのメキシコや韓国に敗れ、まさかのグループステージ敗退。それも屈辱的な最下位という順位だった。

 その後は若返りを図るも、なかなかうまくいかず、ちょうど今から1年前の2020年11月に行なわれたネーションズリーグのスペイン戦で、0-6という歴史的大敗を喫してしまう。ドイツが公式戦でこれほどの点差で負けたのは史上初。6点差で負けた記録は1931年のオーストリアとの親善試合にまで遡らなければならないという。ドイツのサポーターは国民性からか数字やデータを重要視する傾向がある。この大敗は彼らにとって大きな屈辱だった。

 それに追い打ちをかけるように、今度は今年の4月、W杯予選で、北マケドニアという国の規模としてもサッカーのレベルにおいてもドイツとは比べることのできない小国に、それもホームで1-2と敗れてしまう。6月のユーロ2020でもドイツは強豪としての威厳を見せることができず、ベスト16で敗退。敗れた相手が永遠のライバル、イングランドであったこともドイツ人の悔しさを倍増させた。

 つまりここ数年間は、ドイツサッカーの歴史のなかでもかなり悲惨な日々だったと言える。

新生ドイツ代表のカギを握るセルジュ・ニャブリ photo by AP/AFLO新生ドイツ代表のカギを握るセルジュ・ニャブリ photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る 北マケドニアに敗れる少し前の3月、ヨアヒム・レーヴ監督が、ユーロ終了後に退任することを発表した。レーヴは代表監督を15年間、いや、ユルゲン・クリンスマン監督のもとでのアシスタントコーチ時代を入れると実に17年間もドイツ代表を率いたことになる。

 退任を決意したのはレーヴ自身だった。彼もまたチームに新しい風を入れることの必要性を痛感していたのだという。2022年のカタールW杯、そして2024年の自国開催となるユーロで結果を出すには、いち早くチームを新しい監督にゆだねたほうがいいというのが、この決断の理由だった。

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