ネイマール中心のセレソンをブラジル人は危惧。圧倒的な強さでカタールW杯出場もいったいなぜ? (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 それにブラジル人は、このセレソンが圧倒的に強いのではなく、他の南米のチームが弱くなっているからではないのかと疑っている。南米の王様は井の中の蛙で、ヨーロッパの強豪国と対戦したならボロ負けしてしまうのではないか。そんな心配がつきまとっている。現にブラジルが唯一いいプレーを見せた南米の古豪ウルグアイは、ボリビアに3-0で大敗した。

 若手選手の急激な台頭も両刃の剣だ。東京五輪で金メダルをとったおかげで、チッチはこれまで構想に入っていなかった若手選手をチームに入れざるを得なくなった。最終的なメンバーが決定するまで熾烈なレギュラー争いが繰り広げられ、チーム内の空気も落ち着かないものとなるだろう。もし多くの若手がチッチを納得させ、本大会に出場したとしても、彼らはW杯でプレーした経験がない。同じ国際試合でも五輪とW杯はまるで別物だ。

 ブラジル人の一番の弱みは情に流されやすいことにある。一度ネガティブな思いを抱いてしまうと、なかなかそれを払拭することができない。サウダージ(望郷の思い)のために国外のチームでいいプレーができなくなったり、ブラジルW杯でドイツに7-1と大敗を喫したりしたのも、すべてはその気持ちの弱さのためだ。W杯というプレッシャーのなかで、どれだけメンタルを強く保てるかは、セレソンにとって大きな課題となる。

 そのためにはチームにしっかりとした精神的な主柱が必要だが、チームの中心はネイマールだ。来年の2月には30歳になるが、彼がいかにメンタル的に弱いかは、これまで世界中が何度も見てきたことだろう。

 つまり、他の国の人が思うほど、ブラジル人はカタールW杯を楽観視することができないのだ。

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