2021.11.21

中村俊輔、伝説のFKから15年。左足の「魔法」によって現地記者の人生は大きく変わった

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by AFLO

 15年経った今でもスコットランド人記者の脳裏に深く刻まれている一撃は、2006−2007シーズンのCL第5節で生まれた。

 本拠地セルティック・パークにマンチェスター・Uを迎え、条件次第でグループリーグ突破が決まる一戦は、残り10分をきっても均衡が破れなかった。試合終了が近づいてきた後半36分、セルティックは敵陣中央やや右、ゴールから約30メートルの距離でフリーキックを獲得する。

 ゆっくりボールをセットするのは、CL第1節でオランダ代表GKエドウィン・ファン・デルサールの壁を突き破った中村だ。この日本人レフティは前年から緑と白の横縞をまとって以来、何度も左足で"魔法"をかけてきた。

 6万632人で膨れ上がったスタンドから目にした光景を、『ヘラルド』の記者だったグレイグが振り返る。

「あの瞬間、セルティック・パークは静寂に包まれた。そして、スタジアムを突き破っていくかのように、サポーターたちの歓声が響き渡った。ナカはあの一瞬ですべてを成し遂げるために人生をかけてサッカーに励んできて、見事にやり遂げてみせた」

 大観衆が固唾を呑んで見守る静寂から一転、地響きを立てるかのごとく轟音が鳴り渡く。地元サポーターが"パラダイス"と呼ぶ空間は、まさに喜びが爆発した。虎の子の1点をセルティックは守りきり、CLグループステージの壁を突破した。

 歴史の1ページを『ヘラルド』につづったグレイグは、中村のFKが語り継がれる理由はふたつあると言う。

「第一に、その美しさだ。ボールは最初、クロスバーの上方に飛んでいき、ゴールネットに向かって急降下していった。そうやって描かれた弧は、目を見張らされるものだった。

 エドウィン・ファン・デルサールの牙城を突き破るためには、完璧な一撃を放たなければならない。『The Zen of Naka』の取材でマット・ル・ティシエ(元サウサンプトンMF)というイングランドでFKのスペシャリストとして有名な選手に話を聞くと、『歴代ベストではなかったとしても、5本の指に入るFKだ』と断言していた」