監督交代さえできないバルサの苦境。強豪には勝てないチームになった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 新加入のメンフィス・デパイも、クラシコでレアルのDFエデル・ミリトンと入れ替わったプレーを見せたように、トップスピードでテクニックを出せる選手だ。シューターとしても非凡である。だが、ゴールという結果を求めるなかで、周りとの連係はむしろ悪化している。ひとりでやりきろうと、ボールを持つ時間が長くなり、結果的にプレーが読まれやすくなっている。クラシコでも、ひとりでボールを持ち出そうとしてダビド・アラバにかっさらわれ、ロングカウンターから失点する起点になってしまった。

 バルサの強さは、コンビネーションによる創意工夫にあるだろう。個人が目立つサッカーはそもそも悪しき予兆。ボールを動かし、人が次々に動く、その渦を起こすべきなのだが、クーマン・バルサは逆行している。

「今はかつてのように攻め続けるサッカーをする戦力がない」

 クーマンはそう嘆くが、ガビもセルヒオ・ブスケツも、スペイン代表の時のほうがボールプレーヤーとしてはつらつとしている。

 伝統的にバルサは能動的な発想のプレーを信奉しているだけに、そもそも受動的プレーをすることに無理がある。クラシコでもクーマンは、レアルのヴィニシウス・ジュニオール封じに躍起となって、オスカル・ミンゲサをマーカーとして送り出した。だが、そのスピードとテクニックに翻弄され、完全に後手に回った。攻撃的な戦いをすることで相手をねじ伏せる選択肢もあったはずなのだが......。

 その采配には、長期的展望など見えてこない。お気に入りのルーク・デ・ヨングを獲得しても、思考停止に近いクロスを放り込むだけ。これがどうチーム強化につながるのか、疑問である。サイドバックの選手であるセルジーニョ・デストの右FW起用を評価する声もあったが、スポット的には面白い試みだとしても、シーズンを通した活躍は望めないだろう。クラシコの前半につかんだ決定機を逃したシーンでも、トップレベルのアタッカーとしての限界は見えた。

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