ドリブル突破以上の価値。相手ボールを奪う役割「ボールウィナー」活躍の歴史 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ビエラと似た大型のタイプでは、レアル・マドリードとブラジル代表でプレーするカゼミーロが活躍中だ。ブラジルには「第一ボランチ」と呼ばれるボールウィナーの伝統があり、トニーニョ・セレーゾ、マウロ・シルバ、ドゥンガ、エメルソンといった名手を生み出している。ドゥンガを除くとほとんど黒人選手で、現在はマンチェスター・シティでプレーするフェルナンジーニョもそうだ。

 小柄で走力抜群のタイプは、ボックス・トゥ・ボックスのMFに近くなり、大型のタイプはセンターバックの役割もこなす。ボールウィナーは身体能力の特性に応じて分化していった。

<センターバックを兼任する>

 長身でフィジカル能力に秀でたボールウィニングMFの多くは、センターバック(CB)としてもプレーできる。シティでCBに負傷者が続出した時には、フェルナンジーニョがCBを務めていた。

 今季のスタート時点でやはりCBが足りなくなったドルトムントでは、アクセル・ヴィツェル(ベルギー)がポジションを下げている。パリ・サンジェルマンのマルキーニョス(ブラジル)もMFとCBのどちらでもプレーしている。

 戦術的に4バックの場合、とくにプラス1になるMFが必要だ。「ニアゾーン」「ポケット」と呼ばれる、ペナルティーエリアの縦のライン周辺への進入が攻撃パターンとして定番化してきている近年、4人のディフェンスラインでは守り切れなくなっている。それに伴いCBになれるMFの重要性が増してきているのだ。

 ポケットへの進入はインナーラップによって行なわれる。サイドバック(SB)とCBの間のスペースへの進入に対して、対処できるのはCBのほうだ。SBは背中側を走られているので対応はできない。しかし、CBとしては中央のエリアを空けたくない。そのため、インナーラップでのポケット進入に対してはどうしても後手になってしまう。

 パスのタイミングが遅れた時にはカバーを止めてオフサイドポジションに置くこともできるが、失敗すれば進入者が完全にフリーになってしまう。対応が後手になりがちで、オフサイドトラップにもリスクが高く、DF4人では守りにくい攻撃なのだ。

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