メッシなど「偽9番」は名選手の系譜。実は古いその歴史と機能するカラクリを解説

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカー新ポジション論
第10回:偽9番

サッカーのポジションや役割は、時代ともに多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割を再確認していく連載。今回は話題の「偽9番」を紹介。センターフォワードの位置から下がってプレーするスタイルがなぜ機能して、効果的なのか。そこには深いカラクリがある。

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現在、マンチェスター・シティの偽9番として活躍する、フェラン・トーレス現在、マンチェスター・シティの偽9番として活躍する、フェラン・トーレスこの記事に関連する写真を見る<偽9番=名手の系譜>

 近年、ファルソ・ヌエベ(偽9番)を知らしめた代表選手と言えば、リオネル・メッシだろう。

 実は9番(センターフォワード/CF)よりも7番(右ウイング)のほうが多く、バルセロナでルイス・スアレス、ネイマールと組んだMNS時代は右ウイングだったし、現在のパリ・サンジェルマンでも基本的には右側だ。偽9番というよりむしろ偽7番かもしれない。

 現在、偽9番を採用しているチームの代表格は、マンチェスター・シティだ。かつてメッシをCFに起用したジョゼップ・グアルディオラ監督が指揮を執っている。フェラン・トーレスやラヒーム・スターリングなど、見るからにニセ感が漂う人選だ。

 偽9番の狙いは、前線を流動化させることでのチャンス創出であり、結果的に得点者の分散化につながる。バルセロナでのメッシはむしろ例外で、自ら空けたスペースに突入して得点を量産したが、偽9番本来のメカニズムは、9番に得点を依存しないほうにある。

 そのための仕掛けを持っている偽9番と、たんに9番のタイプでない選手がCFをやっているケースがある。さらに偽9番と同義で使われているゼロトップは、実質的にはほぼ存在しない。

 細かく分けると、機能性を持った偽9番、他のポジション適性のある選手がチーム事情で9番になっている場合、そしてほとんどないが前線中央に人を置かないゼロトップの3つになる。

 偽9番は名選手の系譜でもある。最初のファルソ・ヌエベとされているのは、「ラ・マキナ」と呼ばれた1940年代初頭のアルゼンチンのリーベル・プレートのアドルフォ・ペデルネラだ。

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