メッシ、ネイマール、エムパベの3トップが機能せず。CL開幕戦で起きたPSGの昨季と同じ現象

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFP/AFLO

 真ん中と右サイドに関しては、3FWを形成したもうひとりのルイス・スアレスが、かつてのサミュエル・エトーがそうであったように、気の利いたポジション感覚でメッシの奔放な動きを相殺するようにバランスを取っていた。そこでネイマールにまで奔放な動きをされると、3FWのバランスは崩壊する。バルセロナのベテラン記者は「メッシを自由に動かすためには周囲の協力が不可欠。それに従えない選手は、ズラタン・イブラヒモビッチがそうであったように、退団の憂き目に遭う」と、筆者に語っていたものだ。

 ネイマールがバルサ入りしたのは2013年で、いまから8年前の話になるが、歴史はくり返すというか、メッシが入団した現在のPSGで、同様の問題が起きている。

 ネイマールとエムバペは、基本的に左と真ん中の関係だ。本来、左にいるべきはネイマール。だが、この先制点のシーンではエムバペが左にいた。両者の関係は、ネイマールの動きに応じてバランスを取ろうとするエムバペの健気さに依存している。

 だが、さすがのエムバペも、右ウイングであるはずなのに、そこにはほとんどいないメッシの動きをカバーすることはできない。メッシは主に1トップ下やや右あたりで、ひと昔前の司令塔然として陣取っていた。つまりPSGの右サイドには、モロッコ代表の右SBアクラフ・ハキミしかいない状態に陥った。タッチライン際は、別名ピッチの廊下と言われる。数的有利、不利がピッチの中で最も鮮明になる場所だ。そこで崩れたバランスはピッチの中央に波及する。

 ブルージュのオランダ人左ウイング、ノア・ラングが、チームで最もいい選手であることも、PSGの混乱に拍車を掛けた。前半27分、そのノア・ラングとの鮮やかなコンビネーションでオーバーラップしたウクライナ代表の左SBエドュアルド・ソボルが深い位置に侵入。マイナスに折り返すと、ベルギー代表のハンス・ファナケンがこれを押し込み、ブルージュは同点とした。

 後半5分、PSGはエムバペが故障で退場。マウリシオ・ポチェッティーノ監督はマウロ・イカルディを投入した。このCFタイプのアルゼンチン代表選手は、エムバペのように左ウイングの位置に出てプレーすることはできない。さすがのネイマールもそれを知ってか、エムバペ退場以降は、奔放さを抑え、左にとどまることになった。だが、メッシは奔放なプレーに終始した。再三、中盤の真ん中まで下がってプレーした。イカルディが右サイドに出て、エリアをカバーすることもあった。

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