欧州サッカー新シーズンを戦う日本人選手たち。福田正博が大きく期待を寄せる選手とその理由は? (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 その点で久保建英の今シーズンには大きく期待をしている。その理由は、東京五輪の3位決定戦でメキシコに敗れてメダルを逃して発した「次のチャンスが自分にあれば、チーム(日本代表)の勝利に貢献したい」とのコメントに彼の覚悟を感じたからだ。

 普通に考えれば、久保のような抜きん出た才能を持った選手には今後もチャンスは何度も与えられるだろうし、本人だって「次もまたチャンスが来る」と思っても不思議ではない。そうしたメンタリティーにある場合、おそらくは「次のチャンスには~」という言葉が自然と出てくるのではないかと思う。

 しかし、久保は「チャンスがあれば」と発信した。これは久保自身が、期待されてチャンスを与えられているうちに結果を残せなければ、次の機会はめぐってこないと理解しているからだろう。

 若さの特権は多くの時間を有していることだ。それもあって選手の多くは、「この経験を次に生かせるように」とコメントする。だが、実はこの言葉には決定的に欠けている意識がある。深く考えて発していない可能性はあるものの、「次のチャンスがあるとは限らない」のだ。

 プロの世界で生き残っていくためには、起用されるチャンスが訪れたら結果を残さなければいけない。結果が出せないのであれば期待値は下がり、チャンスは下の世代へまわっていき、やがては淘汰されてしまう。

 久保は子どもの頃に日本を飛び出して、世界中の天才少年が集まるバルセロナの育成組織で力をつけてきた。そこは子どもであっても目の前にあるチャンスで結果を出さなければ、次のチャンスはめぐってこないような厳しい生存競争のある世界。プロの世界を生き抜く厳しさを子どもの頃から知っているからこそ、期待されているうちに結果を残さなければいけないことを理解しているのだろう。

 レアル・マドリードに加入して3シーズン目の今季は、マジョルカにレンタル移籍した。来季こそレアル・マドリードの一員としてシーズンを戦うためには、今シーズンが勝負だと久保自身が一番よくわかっていると思う。

 東京五輪が終わってからマジョルカに合流し、時間のあまりないなかで開幕を迎えたが、ピッチでの久保のプレーからは「期待されている今年こそ結果を残す」という気迫が伝わってくる。それだけに今シーズンの久保からは目が離せない。

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