無敗優勝から18年。冨安加入の名門アーセナルはなぜこんなに弱くなった?

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 細かい理由はいくつもあるとして、その発端を探れば、どうしてもアーセン・ベンゲル(現FIFAグローバル・フットボール・ディベロップメント部門チーフ)の存在に突き当たる。

 今から25年前の1996年10月1日。当時名古屋グランパスを指揮していたフランス人監督ベンゲルは、1990−91シーズンを最後にリーグ優勝から遠ざかっていた名門クラブ再建の担い手として、白羽の矢を立てられた。

 以降、2017−18シーズンまでの22シーズンにわたって長期政権を築いたベンゲルは、その間、プレミアリーグ優勝3回、FAカップ優勝7回など、アーセナルの黄金時代を構築。チャンピオンズリーグ(CL)の常連となり、アーセナルは自他ともに認めるヨーロッパ屈指のビッグクラブとして広く認知されるようになった。

 とりわけオールドファンの記憶に深く刻まれているのが、2003−04シーズンに無敗優勝を成し遂げたチームだ。

「ザ・インヴィンシブルズ(無敵)」と呼ばれた当時のチームには、リーグ得点王にも輝いたティエリ・アンリをはじめ、ロベール・ピレス、パトリック・ヴィエラ、シルヴァン・ヴィルトールらフランス代表の面々に、マーティン・キーオン、ソル・キャンベル、アシュリー・コールらイングランド代表DF、さらに重鎮デニス・ベルカンプ(オランダ代表)やフレドリック・ユングベリ(スウェーデン代表)など、クラブのレジェンドに数えられる多くの世界的名手がいた。

 振り返れば、そのシーズンを最後にリーグ優勝から遠ざかっているわけだが、それでも2015−16シーズンまでは12年にわたってトップ4(CL出場圏内の4位以上)の座を死守。全権監督として大きな役割を担っていたベンゲルの存在を抜きにして、アーセナルの黄金期を語れない理由はそこにある。

 これだけの長期政権が終焉したのだから、チームの立て直しに時間を要するのは当然だ。

 たとえば、1986年から2013年までサー・アレックス・ファーガソンが四半世紀以上の長期政権を担ったマンチェスター・Uも、退任後、現在に至るまでリーグ優勝から遠ざかっている。そのマンチェスター・Uがここに来て完全復活の兆しを見せ始めていることを考えれば、5年遅れのアーセナルの復活はもうしばらく待つ必要があるのかもしれない。

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