FIFA対プレミアの軋轢に発展も。ブラジル対アルゼンチン戦で何があったのか (4ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 これに対しスペイン、フランス、イタリアなどのクラブは不満を持っている。彼らは各国協会の要請に従って自分たちの選手を送り出したのだから、当たり前だろう。FIFAはプレミアのクラブに何らかの罰則を与えることになる可能性がある。

 ただ、このカオスな事件の中で、ひとつだけ評価できることがある。世界がコロナ禍で苦しんでいるというのに、スポーツは特別という風潮があった。世界で二番目にコロナの死者が多いブラジルでコパ・アメリカが開かれ、ヨーロッパではEURO決勝が満員のウェンブリーで行なわれ、東京では多くの日本人の反対をよそにオリンピックが開催された。

 今回、ANVISAの担当者が試合を中断させたとき、CONMEBOLの職員はこう言って抗議した。

「ミスター、この試合は世界中にテレビ中継されているんですよ。止めることはできません。プレーは続けないと」

 コロナから人を守る行動よりも、彼らにはテレビ中継のほうが大事なのである。ブラジル対アルゼンチンというビッグマッチが中断されたことは、この風潮に一石を投じられるかもしれない。そうであってほしいと私は期待する。サッカーは決して命より大切ものではない。

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