「打撃」「安堵」......女王様ロナウドが去ったユベントスの複雑なリアクション

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 もうひとつは背番号の問題だ。CR7は今や世界的に知られたブランドだ。ロナウドとしてはもちろん背番号7がほしいだろう。ただ、直接は要求してはいない。「ユナイテッドの背番号7はすでに使われているのは残念だ」と匂わせただけだ。

 その番号をつけているのはエディンソン・カバーニ。簡単に自分の番号を譲るとは思えない相手だ。おまけにこの背番号問題に関して、プレミアリーグは頑なだった。「すでに登録されている番号を勝手に変えることはできない」のだ。ただし、ひとつだけ抜け道があった。「選手が移籍して空いた番号に関しては自由である」。

 そこで何が起こったか。ユナイテッドでこれまで21番をつけていたダニエル・ジェームズが移籍期限の最終日にリーズに完全移籍した。空いた21は、カバーニはいつもウルグアイ代表でつけているお馴染みの番号である。クラブからの正式発表こそまだだが、こうしてカバーニは背番号21となり、背番号7はロナウドの背中につくことになった。はたしてこれは偶然の出来事なのか。ダニエル・ジェームズには、もしかしたら移籍金以外にもちょっとしたお小遣いが入ったのかもしれないという噂もあるが、それは謎のままだ。

 いずれにせよ、ロナウドはユナイテッドとの2年契約にサインした。この取引でユベントスが受け取るのは2300万ユーロ(約30億円)。ユベントスはこれとほぼ同等の金額で、モイーズ・キーンを取り戻した。かつてあまりにも早計にエバートンに売ってしまった選手である。もちろん彼とロナウドとは比べ物にはならない。だがキーンの年俸はチームの財政をひっ迫させるものではないし、何よりロナウドより15歳も若いのだ。

 ロナウドがロッカールームでチームメイトに別れを告げた時、ユニホームを引き裂くように悲しむ者はいなかった。「元気で」「グッドラック」......お決まりの台詞を口にしただけだ。

 彼と仲のよかった選手はほんの数人だった。真の友といえるのは、年に一度、出場チャンスがあるかないかの第3GKカルロ・ピンソーリョぐらいかもしれない。ほとんどの選手は「女王様」から解放され、正直、せいせいしたという感じだろう。

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