「打撃」「安堵」......女王様ロナウドが去ったユベントスの複雑なリアクション

  • パオロ・フォルコリン●文 text by Paolo Forcolin
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

「さよなら、ロナウド」――イタリア人はこの言葉をどんな気持ちで言ったらいいのだろう。哀惜とともに? それとも安堵のため息とともに? たぶんその両方だろう。

 クリスティアーノ・ロナウドのユベントスでの冒険は終わり、イタリアでは相反するリアクションが起こっている。スター選手とそのすばらしいプレーが好きなサポーターは、ロナウドの移籍が現実となると落胆した。3シーズンで101ゴール決めるようなモンスター級のスターはそういるわけではない。ロナウド以上に日常的にチームを勝たせてくれる選手はいないだろう。

 ただし、クラブ側はチームの経営もしなくてはいけない。ユベントスはロナウドが来てからずっと慢性的な赤字だった。彼の報酬はこれまでの誰よりも高いものだった。手取り年収は3100万ユーロ(約40億円)を3年間。税金なども払う必要があるので、ユベントスはその約2倍を払っていた。コロナ禍で無観客試合などを強いられ、世界的にクラブチームの経済状況がひっ迫している中、この金額はユベントスに大きくのしかかっていた。
 
ユベントスから古巣マンチェスター・ユナイテッドに移籍したクリスティアーノ・ロナウド photo by AP/AFLO ユベントスから古巣マンチェスター・ユナイテッドに移籍したクリスティアーノ・ロナウド photo by AP/AFLO この記事に関連する写真を見る こう書けば、ロナウドのマンチェスター行きが決まった時、誰が安堵の息を吐いたかは明白だろう。マンチェスターでは彼を巡ってユナイテッドとシティのダービーが繰り広げられ、結局勝ったのはユナイテッドだった。だが、シティもがっかりしただけではなかっただろう。多くのサポーターは、ロナウドが入ることで、ジョゼップ・グアルディオラがここまで作り上げてきたチームのハーモニーが壊れるのではないかと危惧していた。それはグアルディオラの態度からもうかがえた。ロナウドのシティ入りがほぼ確定と言われていた際も、彼はほぼノーリアクションだった。

 移籍の公式発表はかなり遅れたが、それには2つの理由がある。ひとつはワクチン接種の問題。イングランドサッカー協会はワクチンに対しては非常に厳格な規則をつくり、新たに登録する選手は必ず2回のワクチンを接種していなければならない。ロナウドは決して強固なワクチン反対派ではないが、「あまり必要性はない」と、これまで接種していなかった。

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