サッカーで五輪連覇のブラジルが大歓喜の事情。マラカナンの屈辱を東京で晴らした (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 チッチ監督の采配にも多くの疑問が残った。試合終了まで10分を切った時、チッチは左SBの選手を入れ替えた。0-1で負けている決勝で、アタッカーを入れない監督がいったいどこにいるのだろう。ヴィニシウス・ジュニオールの起用方にも納得できなかった。レアル・マドリードのストライカーは、コパ・アメリカでほとんどプレーする機会がなかった。

 唯一この決勝でよかったのはネイマールだった。これだけ皆がセレソンに怒っていながら、その矛先をネイマールに向けないことは珍しいくらいだ。ブラジルのパスの70%がネイマールに集中した。しかし、それは同時に孤軍奮闘を意味する。ひとりだけでは何もできない。

 それを見抜いたアルゼンチンの選手は、ネイマールに対する危険なプレーを仕掛けた。アルゼンチンには5枚のイエローが出されたが、そのすべてはネイマールに対するファウルによるものだった。

 アルゼンチンは最大のライバル国ブラジルでチャンピオンとなり、SNS上ではリオのキリスト像をメッシにたとえるコラージュが出回った。34歳のメッシに、ブラジルは初の代表タイトルを贈ったのだ。それも我らが殿堂マラカナンで、だ。

 ブラジルはどうしてもオリンピックで勝利を手に入れなければならなかった。そのために、コパ・アメリカを戦ったばかりのリシャルリソンも、休み返上で追加招集に応じた。

 一方、コパ・アメリカに優勝したアルゼンチンはオリンピックチームに全く力を入れていなかった。その結果がまさかのグループリーグ敗退だ。

 もし、コパ・アメリカでタイトルをとっていなかったならば、アルゼンチンはもっと強力なチームでオリンピックに臨んできたことは想像に難くない。ヨーロッパ選手権の準決勝で敗れたスペインが、A代表の選手を6人も送り込んできたのと同じだろう。リオネル・メッシを、タイトルをとらせるために突っ込んできた可能性さえある。そうしたらブラジルの決勝の相手はスペインではなく、アルゼンチンだったかもしれない。

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