メッシが典型、現代サッカーでのインサイドFWの重要性。カギは「斜め」の攻撃だ (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 現在のサッカーでは、インサイドハーフは守備時にしっかりディフェンスができないと務まらない。ただそれだと、攻撃力はすごいのに守備はあまり......、という選手はハーフスペースに置きにくい。だから、ウイングが攻撃時にインサイドハーフとなり、インサイドFW的なプレーをするのだろう。

<得点を量産するインサイドフォワード>

 歴史的に見て、インサイドFWはスーパースターの宝庫だ。

 そもそも、べらぼうに得点したり、アシストしたりする人は、だいたいインサイドFWである。CFはゴールに一番近いポジションなので、確かに点取り屋が多いけれども、インサイドFWのバケモノはそれ以上に点をとる。

 わかりやすいのがリオネル・メッシだ。ジョゼップ・グアルディオラ監督が「偽9番」に起用したのが大当たりし、メッシと言えばファルソ・ヌエベ、ゼロトップのイメージを持つ人が多いかもしれない。

 だが、実質は右のインサイドFW。右ハーフスペースを起点にプレーしている。

 あとはご存知のペレ。彼は左のインサイドFWだった。ストライカーという印象だが、ペレはほとんど9番(CF)でプレーしたことがない。

 当時のブラジル代表のフォーメーション図を見ると、右ウイングにガリンシャがいて、CFにはババがいるが、ペレはCFと左ウイングの中間のちょっと引いた場所に「ペレ」と書かれていた。

「なにこれ?」と思ったものだ。ブラジルは左ウイングがワーキングウインガーでFWとMFを兼任していたのだが、それにしてもペレのポジションは中途半端だった。だがこれは、インサイドFWが左側のペレだけだったというわけだ。

 得点量産型のインサイドFWは、じつは偽9番(CFの位置から下がってプレーする役割)と相性がいい。

◆酔っ払いながらゴール。ペレよりも多く5000得点した破格のストライカー>>

「ヴンダーチーム」(=奇跡のチーム/1930年代のオーストリア代表)では、インサイドFWがヨーゼフ・ビカン、CFに偽9番的なマティアス・シンデラー。「ラ・マキナ」(機械)と呼ばれた1940年代のアルゼンチンのリーベル・プレートの、アンヘル・ラブルナとアドルフォ・ペデルネラ。1950年代のハンガリーの「マジック・マジャール」では、フェレンツ・プスカシュとナーンドル・ヒデクチの関係がそうだった。

 前向きにプレーできるのが利点のインサイドFWにとって、スペースをくれる偽9番はありがたい存在なのだ。

 メッシが移籍したパリ・サンジェルマンは、メッシ、ネイマール、キリアン・エムバペの3人とも、ウイングでインサイドFW、偽9番もできる。どう棲み分けて相乗効果を出していくのだろう。

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