東京五輪代表有力候補だった安部裕葵。バルサBでの評価は高いが、トップ昇格の可能性は? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Pressinphoto//AFLO

 安部は昨シーズンを、ケガでほぼ棒に振った。そのため1年はモラトリアムと言えるだろう。今シーズン、バルサBで結果を叩き出し、トップチームに招集されることが目標になる。十分な活躍を示せなければ、それなりの移籍金を獲得する形での売却候補となる。

「バルサの安部誕生」のタイムリミットは迫っている。

 チャンスをつかみ取るだけの能力の高さを、安部は備えている。2シーズンをスペインで過ごし、逞しさも増した。殻を破りつつある気配は漂わせている。

 2019年10月、バルセロナ郊外。筆者はヨハン・クライフスタジアムを取材で訪れたが、チームメイトとボール回しをしていた安部は、"お客さん感"が拭えなかった。おとなしい日本人が外国のクラブで緊張を帯びる風景、と言ったらいいだろうか。試合でピッチに入ってボールを持った瞬間、その危うさは頼もしさに変化したが......。

 それから2年近くが経とうとする現在、その顔つきは見違えるほど変わった。

 バルサBの主力選手として、どの局面でも落ち着いた表情を見せる。ピッチに入った時の迫力は入団当初と比較にならない。今も守備面での判断に関しては成熟の余地はあるが、戦士の顔つきになった。

 それは困難を乗り越えた自信によるものだろうか。

 2019-20シーズン、安部は「偽9番」で定位置をつかみ、トップ帯同も噂されたほどだった。しかし昨年2月、右足ハムストリングのケガで長期戦線離脱を余儀なくされることになる。同年11月に復帰したものの、直後に再び同じ部位のケガで半年近くもチームを離れることになった。1年以上、プレーもままならず、有力視されていた東京五輪代表メンバーからも外れた。

 安部は、捲土重来を期す。

 今年5月、安部は2部昇格プレーオフでバルサBに合流し、ビジャレアルB戦の終盤に久しぶりにピッチに立った。復帰2試合目のアルコジャーノ戦は後半途中出場で、ドリブル突破により相手のイエローカードを誘い、右サイドから決定的クロスも送っている。準決勝(2部昇格最終プレーオフ1回戦)進出に貢献すると、そのムルシア戦は、試合勘が足りない状況だったにもかかわらず、先発を託された。試合は2-2でPK戦に突入し、昇格にはあと一歩及ばなかったが......。

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