メッシとネイマールの涙で終わったコパ・アメリカ。その舞台裏にあったまさかのドタバタ劇

  • 三村高之●文 text by Mimura Takayuki
  • photo by Reuters/AFLO

 勝利の瞬間、リオネル・メッシは泣き崩れ、喜びの輪に包まれるように胴上げされた。敗れたネイマールは芝生に涙を流したが、やがて雄叫びを上げるアルゼンチン代表に歩み寄り、親友であるメッシと抱き合って祝福。そして死闘を演じたその他のライバルたちとも健闘を称え合った。コロナ禍で強行開催されたコパ・アメリカは感動的な幕切れとなった。

 ロングパスを受けたアンヘル・ディ・マリアのゴールで、アルゼンチンが28年振り15回目の優勝を飾った今大会は、アルゼンチンのメッシとブラジルのネイマールのためのコパ・アメリカといっても過言ではなかった。

コパ・アメリカ決勝後、健闘を称え合うリオネル・メッシとネイマールコパ・アメリカ決勝後、健闘を称え合うリオネル・メッシとネイマール 2ゴール3アシストのネイマールは、この数字以上に大黒柱としてチームに貢献した。「決勝戦は親友(メッシ)のいるアルゼンチンと戦い、優勝したい」と意気込みを語っていたが、今一歩、及ばなかった。

 一方のメッシは、この大会を代表選手としての集大成と考えていた。バルセロナの一員としても個人としても数々の栄光を手中にしてきたが、代表では2014年ブラジルW杯と2015年、2016年のコパ・アメリカでの準優勝が最高成績で、いまだ無冠。おそらく最後となるであろう今大会にすべてをかけてきた。そして、その思いそのままに4得点5アシストと大爆発した。

 ブラジルと並び「南米の2強」と世界が認めるアルゼンチンだが、コパ・アメリカを制したのは1993年のエクアドル大会が最後。その後28年間、10大会(2年おきに開催された時期もあったため)の長きにわたり、優勝から遠ざかっていた。

 南米のサッカーはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの3カ国が中心となって発展してきた歴史がある。しかし、アルゼンチンとウルグアイは兄弟のような関係である一方、ブラジルは独立性が強い。そのため足並みの揃わない時期には、ブラジルはコパ・アメリカに最強チームを送らなかった。アルゼンチンが最後に優勝した1993年も、若かりしロベルト・カルロスやカフーがいたものの、バリバリのレギュラーはミューレルら数名で、1.5軍以下の編成だった。

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